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2025.12.26 07:00

イベントレポート◎全国ワークスタイル変革大賞2025/イベント編
“事例と知見の共有”を色濃く反映したイベントへと大きく進化

 2025年12月16日、デジタル技術で地域や従業員の幸福度(ウェルビーイング)を高める取り組みや施策、事例を共有する「全国ワークスタイル変革大賞2025」の全国大会が都内のCITY HALL & GALLERY GOTANDAで開催されました(オンラインとのハイブリッド開催)。

 全国ワークスタイル変革大賞は、働き方の未来を一緒に創るアワードです。単なる表彰にとどまらず、ワークスタイル変革に取り組む全国の企業・団体の事例や知見を広く発信。成功事例はもちろんのこと、試行錯誤のプロセスや課題、失敗事例なども含め、企業や団体の挑戦を共有し学びあう場となっています。 

 2025年は、イベント名と同様に前年開催(関連記事:イベントレポート◎全国ワークスタイル変革大賞2024)から大きく変革されました。

 事前審査ではなく、地方大会で選ばれたファイナリストがイベント当日にプレゼンテーションを行い、会場参加者やオンライン視聴者と事例を共有。ファイナリストの事例発表後、審査員からは質問や講評が登壇者へ投げかけられました。そうした会話を通じた知見の深化も、同イベントの特徴でしょう。

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選考は8名の審査員で行われた。プレゼンテーション審査では、さまざまな視点から登壇者への質問が上がった

 また、前年の大賞獲得企業が登壇し対談を行った「オープニングセッション」や、協賛企業による「スポンサーセッション」などがプログラムに盛り込まれました。さらに別会場では、会場限定オフレコのクローズドセッションとして、「ワークスタイル変革の失敗学」と「生成AI活用共有会」が開催され、変革の裏側にある失敗談や本音を共有する場が用意されました。

 事例や知見の共有というイベントコンセプトが色濃く反映された全国ワークスタイル大賞2025。本稿では、イベント当日の様子をレポートします。

オープニングセッション:前年受賞企業が登壇

 イベントの口火を切ったのはオープニングセッションです。「“時短”だけでは売上3倍は実現できない~島田由香氏×大賞受賞者ケイリーパートナーズ鷲谷氏が語る、業種を超えた“人が輝く”仕組みづくり~」と題し、審査員の島田氏と前年イベントで企業部門の大賞に輝いたケイリーパートナーズの鷲谷恭子氏が対談しました。

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株式会社ケイリーパートナーズ(福島県郡山市)代表取締役の鷲谷恭子氏(右)と、株式会社YeeY共同創業者/代表取締役、一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会代表理事を兼ねる審査員の島田由香氏(左)

 単なる労働時間の削減ではなく、人が生き生きと働く状態を作り出すことが企業の業績と地域の成長に結びつくとして、さまざまな取り組み事例を交えながら対談は進行しました。

 鷲谷氏は結婚や出産などによりライフステージが変わっていく中で、その時点での最適解を選べる働き方が絶対に必要であると強調します。その実現に向けて、「社員が最高のパフォーマンスを発揮できる組織を作り成果を上げていく」(同氏)ことに重点を置き、会社経営に取り組んできたといいます。

 この結果、在宅勤務や子連れ出勤、短時間労働など多様な働き方の中でITを活用しながら、社員が相互に助け合ってワークシェアリングを成功させ、しっかりと業績を伸ばしてきました。

 働く人が生き生きする仕組み作りについて、鷲谷氏は「属人化している業務を細分化して見直しを続け、小さな成功体験を職場の中で創出し、それを積み重ねて大きな取り組みへと拡大している」とのこと。

 島田氏も、「だれもがよい状態でパフォーマンスを出せる環境はウェルビーイングそのもの。業務効率化や業績向上と、ウェルビーイングは切っても切り離せない関係にある。ウェルビーイングがよければ、絶対に成果も良好だ。これらを両立しているのがケイリーパートナーズといえる」と同調しました。

 仕事をする人にとっては「働きやすさ」に加えて、「働きがい」も大切です。鷲谷氏は、リモートワークをしている母親の横顔や、“かっこいい”姿を子どもたちに見せることが働きがいになっていることを紹介。自身の会社についても、人生の充実や幸福につながる働きがいを重視した経営を行いたいとしています。

 また、ケイリーパートナーズでは社内のチームごとに、オンラインで直接会話できる場を設けています。そこでは課題図書を用いた学びの共有の場として“読書会”を開催しており、参加者が悩み事や不安などを吐露する機会にもなっているとのこと。島田氏は、「デジタル技術やAI の積極活用と同時に、人間であるからこそ必要な部分もしっかりケアしていくことが大事である」と指摘しました。

 この他、ケイリーパートナーズの地域と連携について、福島県白河市で就労に前向きな地域の女性を対象に同社のリモートワークを疑似体験する「女性に寄り添うライフワークサポート事業」が紹介されました。

 例えば、2025年秋に実施した「ライフワークフェスタ」では、就労意欲のある個人と企業や行政職員などの参加者が語り合い、事例を共有する場を提供。「中小企業が行政の支援を受けることで、最初の一歩を力強く踏み出せるという行政事業の力を感じた。地域を巻き込むことは非常に大事だと実感した」(鷲谷氏)と語っています。

プレゼン審査&アワード:全ファイナリストを表彰

 イベントのメインは、やはりファイナリストが取り組んだワークスタイル変革の事例を紹介するプレゼンテーション審査と表彰式です。その詳細は別記事「イベントレポート◎全国ワークスタイル変革大賞/事例共有&アワード編」でレポートしました。ここでは概要を紹介しましょう。

ファイナリストによるプレゼンテーション審査

 イベント当日、プレゼンテーション審査ではファイナリストとなった8社が前半と後半に分かれて、自社が取り組んだ変革事例を発表しました。登壇したのは以下の企業です。

・東北コピー販売株式会社(福島県福島市)
・社会福祉法人風の森(東京都杉並区)
・医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院(熊本県熊本市)
・資生堂インタラクティブビューティー株式会社(東京都中央区)
・ダイハツ工業株式会社(大阪府池田市)
・株式会社川六(香川県高松市)
・和光会グループ(岐阜県岐阜市)
・株式会社中川(和歌山県田辺市)


 審査は、戦略性や全社レベルでの浸透度、成果やインパクト、再現性(他への波及効果)、デジタル技術の効果的活用という5つの観点から総合的に行われます。各社のプレゼンテーションでは、審査員から質問や講評が寄せられました。

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ファイナリストによるプレゼンテーションは、会場参加者やオンライン視聴者にとって事例や知見の共有のよい機会となった(画像は和光会グループによる事例紹介)

 各社の事例発表を記者視点で見るとDX推進の取り組みが現場における業務効率の改善や働き方改革に実際に結びつき、それが働きやすさや働きがいにつながっていることがよく分かります。

 例えば、医療や介護、保育業界、コピー機業界などでは紙文化が根強く残っており、それをムダな業務の根本原因として課題視している企業は少なくありません。そうした中、ファイナリストの多くはITやAIの活用により問題を解決し、新たな時間を創出。本業に集中できる環境を構築し、働きがいを実感できるようなワークスタイル変革に成功しています。

 また、小さな成功体験や成果を着実に積み上げていくことで、最初はDX推進におよび腰だった現場が、やる気を出して楽しく、あるいは面白く取り組みを積み重ねていくなど、それもまた働きやすさや働きがいに結び付いていくことが分かり印象的でした。

大賞は医療・福祉法人の和光会グループに

 ファイナリストによるプレゼンテーション審査を経て、2025年の各賞受賞者が決まりました。大賞には、医療・介護現場のマニュアル改革に取り組み膨大な数のマニュアルをクラウド化した和光会グループが選出されました。

 手書き文化が残る業界で、デジタルを駆使して大幅な業務効率の改善に成功した取り組みが評価されました。

 大賞以外にも、同イベントの大会実行委員会を構成する団体名を冠した5つの「団体賞」、「スポンサー賞」や来場者が決める「オーディエンス賞」などが発表され、受賞者にトロフィーやパネルが贈呈されました。各賞の受賞者は以下の通りです。

・大賞:和光会グループ
・ITコーディネータ協会 会長賞:株式会社川六
・クラウドサービス推進機構 理事長賞:社会福祉法人 風の森
・ノーコード推進協会賞:東北コピー販売株式会社
・ライトハウスDX支援協会 理事長賞:医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院
・日本デジタルトランスフォーメーション推進協会賞:ダイハツ工業株式会社
・セールスフォース・ジャパン賞:株式会社中川
・fun and creative賞:株式会社川六
・審査員特別賞:資生堂インタラクティブビューティー株式会社
・オーディエンス賞:株式会社中川


 また、プレゼンテーション審査の対象となったファイナリスト以外の表彰もありました。「ベストスピーカー賞」です。

 ベストスピーカー賞は、別会場で行われたギャラリーセッションの登壇者を対象としたもの。成功体験ではなく、取り組みを通じて何を学んだかという失敗談”や“本音”にフォーカスしたセッションにおいて、素晴らしい知見を披露した企業に贈られます。受賞企業には、サンメッセ株式会社(岐阜県大垣市)と株式会社TSグループ(鹿児島県鹿児島市)が選出されました。

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左からプレゼンターの長戸美樹氏(株式会社プロッシモコンサルティング代表取締役)、ベストスピーカー賞を受賞した株式会社TSグループの吉松良平氏と、サンメッセ株式会社の大倉圭司氏

スポンサーセッション:メインテーマはAI

 イベントへの協賛メーカーによるセッションでは、株式会社kubellと株式会社セールスフォース・ジャパンが登壇。セッションテーマは、両社ともAIにフォーカスしたものとなりました。

スポンサーセッション①:株式会社kubell

 株式会社kubell(東京都港区)は、「kubellが考える、AIで人が輝く未来の働き方」をテーマに代表取締役兼社長 上級執行役員CEOの山本正喜氏が登壇しました。

 山本氏は、まず作業と仕事の違いに言及しました。作業とは、「定められた手順やルールに従って行う具体的で反復的なタスク」であり、仕事とは「価値提供という目的をもって自ら考え、判断して行う能動的な活動」であるとのこと。

 AI時代においては、「AIによる代替が進むのは“作業”で、後者の“仕事”をする人の市場価値は大きく向上する」と断じました。

 そして、「現在の業務が、作業と仕事のいずれに該当するのか、よく見つめ直してほしい」と山本氏。「作業を手放し、仕事を作っていくことで、人の仕事は奪われず、AIと共存していくことが可能である」と語りました。

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kubell代表取締役の山本正喜氏。同氏は、利用者数が国内最大のビジネスチャット「Chatwork」の開発者でもある

スポンサーセッション②:株式会社セールスフォース・ジャパン

 株式会社セールスフォース・ジャパン(東京都千代田区)からは、ビジネスオペレーション本部の田崎純一郎氏が「Welcome to the Agentic Enterprise」をテーマに登壇しました。

 田崎氏は、エージェント型AIの導入を進める企業の大半が、パイロット導入の段階で投資対効果が得られていないという調査結果を紹介。その理由として「データの質が低いこと(基幹システムやExcelシートなど、データの格納場所がバラバラでデータ収集自体が大変)」と、「組み込みではなく後付けであること(既存の業務フローでは、AI活用が前提ではない)」などを挙げました。

 そのうえで、同社のAI製品「Agentforce」を紹介し、その特徴や導入効果について説明。広島県にある印刷会社を引き合いに、「安価なSFA(営業支援)ツールを導入して失敗したが、SalesforceのAIを用いることで売り上げ目標達成率336%など大きな成果を上げた」という事例で自社製品を訴求しました。

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セールスフォース・ジャパンの田崎氏は、エージェント型AIをテーマに自社製品をアピールした

JDXアンバサダーが総勢50名体制に

 イベントでは審査や表彰式、セッションに加えてJDXが2025年6月に創設した「JDXアンバサダー制度」の第2期メンバーとなる11名を新たに発表しました。

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イベントには、第2期メンバー11名のうち7名(写真前列)と、第1期メンバー9名(後列)が集合した

 JDXアンバサダーは、日本DX大賞をはじめ、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会(JDX)が主催する各種のコンテストで優れた実績をあげた受賞者のうち、DX推進の経験と知見を社会に還元する意欲を持つ人たちをリーダーとして認定する制度です。

 すでに第1期メンバー39名がアンバサダーに認定され、2025年7月16日~17日に行われた「日本DX大賞2025サミット&アワード(関連記事:イベントレポート◎日本DX大賞/Day1)、Day2」で紹介されました。

 今回、産官学医と幅広い分野で活躍するメンバー11名が新たに加わり、アンバサダーは総勢50名体制となりました。彼らが全国各地で活躍することで、日本の変革をリードし、新たなイノベーションを生み出す動きが一段と加速していきそうです。

閉会:JDX代表理事が登壇

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閉会の挨拶をするJDX代表理事の森戸裕一氏

 前年以上の盛り上がりとなった2025年の全国ワークスタイル変革大賞は、各企業・団体の表彰をもって終了。閉会の挨拶には主催者を代表してJDX代表理事の森戸裕一氏が登壇しました。

 「ワークスタイル変革は最終目的ではない。ワークスタイルを変革することで何を目指すかが重要だ。この点、当イベントの取り組みでは、ウェルビーイングを実現したい、地域経済を活性化したい、働いている社員を笑顔にしたいといった変革により実現されるべき目的が明確になっていた」と森戸氏。「非常にいいイベントになったのではないか」と総括しました。

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