デジタル変革を含めて地域や従業員の幸福度(ウェルビーイング)を高める取り組みや施策、事例を共有する「全国ワークスタイル変革大賞2025」の全国大会が、2025年12月16日に都内において開催(オンラインとのハイブリッド形式)されました。
同イベントでは事例や知見の共有をメインコンセプトに据えており、2025年は前年以上に共有色が色濃く反映されたものとなりました(関連記事:日本ワークスタイル変革大賞2025/イベント編)。
今回から、地方予選で選出されファイナリストとなった8社がイベント当日に登壇し、自社の取り組みについて熱く語るプレゼンテーション審査へとスタイル変更されました。
プレゼンテーション審査の基準は、戦略性や全社レベルでの浸透度、成果やインパクト、再現性(他への波及効果)、デジタル技術の効果的活用といった点です。審査員による質問や講評を通じて総合的な選考が行われ、大賞をはじめとして、大会実行委員会の主要構成団体による団体賞(5件)やスポンサー賞(2件)などが決まりました。
本稿では、事例共有というイベントの趣旨に沿い、受賞企業の取り組み内容と評価ポイントにフォーカスして紹介していきます。
和光会グループ(岐阜県岐阜市)
2025年の全国ワークスタイル変革大賞において、「大賞」に選出されたのは創業100周年を迎えた医療・福祉グループの和光会グループ(岐阜県岐阜市)でした。
事例テーマ:誰も取り残さないDX―医療・福祉の職場変革―
和光会グループは1925 年に創業されました。現在、岐阜県内で90 事業所において2000人近い職員を抱えるまでに成長しています。そうした中、事業拡大に伴う慢性的な人材不足の問題に加え、手書きの記録や引き継ぎに時間を要するため本来の業務に集中できないといった課題がありました。
そこで、取り組んだのが医療・介護現場のマニュアル改革です。DX推進課を立ち上げて、紙のマニュアルをすべてクラウド化するプロジェクトに着手。タブレットなどの端末でマニュアルを確認できる環境を整えました。
現在は2500本以上のマニュアルをクラウド化しているとのこと。マニュアル作成のアプリ化により作成時間が大幅に短縮されたこと、本部への電話による問い合わせがほぼなくなったことなどで、トータルの削減効果は年間8万4240時間にも達したといいます。
プレゼンテーションに登壇した和光会グループの鈴木未沙氏は、DX推進が成功したポイントとして、「デジタルを使える環境を構築すること」「現場とDX推進課で明確に役割を分担したこと」「だれでも使えるようにするため丁寧に定着を支援したこと」の三点を掲示。「個人的には、同じ業界で、もっと成功事例を共有したい。みんなで働き方改革ができたらいいと思っている」と語りました。
評価ポイント/講評など
和光会グループの事例では、年間8万4240時間の業務時間の削減を実現したことにより、施設などの利用者と向き合う最も大切な本業の時間を創出した点が高く評価されました。
審査員を務めた株式会社YeeY共同創業者で代表取締役の島田由香氏は、同グループの取り組みについて次のように講評しています。
「他の法人などへ拡大していける点が非常に重要だろう。グループ全体で力を合わせることで、大幅な業務時間の削減が実現できたことも素晴らしいが、どうせやるなら真剣かつ楽しくやろうといった組織文化や風土があり、一連の取り組みの過程において、そうした社風が一段と強化されたのではないか。多くの人に知ってもらいたい好事例である」。
鈴木氏は、今回紹介したマニュアルのクラウド化について、「非常に多くの職員が参加し一生懸命取り組み、何年もかけて実現した。そのことが評価されて非常にうれしい。今回の受賞で、医療・福祉業界のために尽力できる法人になるべきだと改めて思った」と述べました。
株式会社川六(香川県高松市)
ホテルの再生事業を主軸とし、業績不振ホテルの生産性改善に取り組む株式会社川六(香川県高松市)は、「ITコーディネータ協会 会長賞」と「fun and creative賞」のダブル受賞となりました。
事例テーマ:“物的環境整備(アナログ)”と“DX推進(デジタル)”の好循環を生み出す働き方改革
川六は、いかにして業績不振ホテルの生産性を改善して変革を進めたか、という事例をプレゼンテーションで紹介しました。業績不振ホテルでは不要備品が多い傾向があるとして、再生では物的環境の整備(整理整頓)とDX 推進に取り組んだとのことです。
例えば、DX推進ではホテルの基幹システムを刷新しました。従来、予約から宿泊、チェックアウトまで13工程あったフロント業務に関して、データ連携による自動化を進めることで、6工程に短縮しました。経理業務においてもDXを進め、1人のパート社員が週のうち3日は在宅勤務できる体制を整えています。
さらに、生成 AI を活用して、深夜時間帯の電話自動応答システムを構築したとのこと。同システムを用いた業績不振ホテルの再生では、わずか37.1%だった平均稼働率を再オープン3か月後に稼働率92.3%まで押し上げました。
評価ポイント/講評など:ITコーディネータ協会 会長賞
物的環境整備というアナログとシステム内製化というデジタルを組み合わせた働き方改革の推進により、業績不振ホテルを再生し高い稼働率を実現した取り組みが評価されました。
審査員を務めた特定非営利活動法人ITコーディネータ協会の野村真実会長は、同社のさまざまな取り組みの中で、経理のパート社員に対して週3回の在宅勤務を実現したことに言及し、「これだけを取り上げても素晴らしい。他の取り組みもそうだが、とにかく失敗してもいいからやってみようという雰囲気が感じられた。全国の中小企業にとっても、参考となるいい事例だったのではないか」と講評しています。
評価ポイント/講評など:fun and creative賞
「fun and creative賞」は、株式会社kubellが掲げる“働くをもっと楽しく、創造的に(make work more fun and creative)”というコーポレートミッションに由来するものです。
川六の受賞は、このミッションを体現しつつ会場で最も元気がよく、楽しんで変革を推進している姿勢とプレゼンテーションの迫力が評価されてのこと。kubellのCOO室長である中哲成氏は、「各社のプレゼンテーションはどれも本当に生き生きとしていた。特に、川六には非常に元気のよい、楽しくてたまらないといった、そんな迫力を感じた」と選考理由を述べました。
受賞の感想で難波氏は、自身がコロナ禍の2020年に入社した当時やこれまでの取り組みを振り返りつつ、「従業員がどんどん会社を変革していくという気概を持つ必要があると改めて実感している。そうした意識を持って、今後も働き方改革を進めていきたい」と語りました。
社会福祉法人 風の森(東京都杉並区)
深刻化する保育士不足の問題解決を目指して、改革に取り組んだ社会福祉法人風の森(東京都杉並区)は、「クラウドサービス推進機構 理事長賞」を受賞しました。
事例テーマ:保育士の働き方を改革し崖っぷちの保育業界を持続可能にする
深刻化する保育士不足の問題の一つの要因は、資格を持ちながら現場を離れている保育士が有資格者の6割超にもおよんでいること。そこで、社会福祉法人風の森は、こうした有資格者が現場に復帰しやすい環境づくりを目指し、ITを活用した保育士の働き方改革に着手しました。
まず、生産性向上と職員の幸福度の両立を目指し、保育士の仕事を、“増やしたい仕事”と“減らしたい仕事”に分類しました。増やしたい仕事とは子供や保護者と接すること、減らしたい仕事とは周辺雑務などのこと。そして、後者の徹底した削減に取り組みます。
具体的には、連絡帳をアプリ化して手書き作業をなくした他、子供たちの安全管理や職員の労務管理、保育業務の振り返り分析といった業務をクラウド型システムへと移行しました。さらに、保育園の見学会や採用活動に関する電話予約のオンライン化、子供ごとに管理していた備品類の集中管理化など、煩雑な業務を徹底して削減しました。
この結果、休憩60分や完全週休2日制、残業ゼロという勤務環境を実現して保育士の負担を軽減。子どもたちとの語り合いや保護者支援などに割り当てられるなど、保育士としての本業に注力できる時間が増えたといいます。
今や、風の森には全国から働き手の志望者が集まっており、中途採用の倍率は18倍と非常に高い水準に達しているとのことです。
評価ポイント/講評など
受賞理由は、ITツールの徹底活用により、“残業ゼロ、持ち帰り仕事ゼロ”を実現して保育士が働きやすい環境を構築したことや、保育の質向上と持続可能な経営を両立させたことなどが、高く評価された点です。
一般社団法人クラウドサービス推進機構の播磨崇理事長は、受賞した風の森による働き方の変革について、次のように述べています。
「きちんと60分の休憩時間が取れる、週休2日を実現するなどの取り組みに加え、求人倍率18倍などの高い実績をあげていることが素晴らしい。他の保育施設にも、同じ取り組みを広めていこうとしている試みにも感銘を受けた。今後も、風の森の取り組みがロールモデルになって広がってほしい」。
東北コピー販売株式会社(福島県福島市)
コピー機業界で事業を展開している東北コピー販売株式会社(福島県福島市)は、「ノーコード推進協会賞」に選出されました。
事例テーマ:クラウドだけじゃ変わらない。10年かけて“人”と“現場”が変わった話~営業チームが目覚めた、現場DXのリアルストーリー~
コピー機の販売を主に手掛ける同社では、業務の大半が紙ベースだったとのこと。このため、社員は書類の整理に忙殺され、提案や販売、保守といった顧客対応が優先される中、積み重なる書類との闘いを強いられていました。
そこで、「社員を楽に、仕事を楽しくできるように」との目標を掲げて、ビジネスモデルの変革に着手します。顧客情報を集約・蓄積して、機器の導入履歴を一元的に管理する環境を整えました。さらに、属人化していたデータの共有を進め、これらを経営判断に役立てるデータ駆動型営業スタイルへと大きく舵を取りました。これらの環境構築は、いずれもノーコードツールを用いて実現されています。
新たな営業スタイルを目指す中で、データを分析してアイデアに結びつけられる社員とそうでない社員で格差が生じるという課題が浮上。AIを活用したデータ解析を活用することで、この問題を解決しました。
こうした取り組みは、人員が20%も減ってしまった状況で売上30%アップを実現させると共に、従量課金モデルから長期的な顧客価値を優先するソリューションモデルへの変革をもたらしました。
評価ポイント/講評など
東北コピー販売は、紙文化が根強く残る業界にあって顧客データを蓄積・活用して社員の業務負担を軽減すると共に、データ活用により顧客の業務改善を提案するパートナー企業へとビジネスモデルを変革させた10年間の軌跡が評価されました。
一般社団法人ノーコード推進協会の中山五輪男代表理事は「ノーコードツールを使って多くのアプリケーションを作成し、DX推進とワークスタイル変革を実現してきた点を評価した。今後も東北地区を代表するリーダー的な企業として発展していってほしい」と講評しています。
JDXアンバサダー制度(*1)の第1期メンバーでもある同社代表取締役の高橋剛氏は、「当社にぴったりの賞をいただいた。これからも地域のために全力で頑張っていきたい。次はJDXアンバサダーの仕事として、地域の顧客をこの場に連れてくることを自身のミッションにしたい」と受賞の喜びを語りました。
(*1)JDX主催のコンテストで優れた実績をあげた受賞者のうち、DX推進の経験と知見を社会に還元する意欲を持つ人たちをリーダー認定する制度
医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院(熊本県熊本市)
医療法人田中会 武蔵ヶ丘病院(熊本県熊本市)は、「ライトハウスDX支援協会 理事長賞」を受賞しました
事例テーマ:“小さな自動化の積み重ねが職場を変える”~RPAとAI活用による業務改善の取り組み~
さまざまなDXを推進している武蔵ヶ丘病院は、今回のプレゼンテーション審査において入院患者の発熱や排便状況確認の自動化への取り組みについて紹介しました。
医療現場においても、医療従事者の人材不足は深刻です。例えば、看護師は入院患者の状態を情報として電子カルテに日々記録しなければなりません。ひとりの患者に数分の作業とはいえ、人手不足の中では、負担は増すばかりという状況でした。
これをさらに悪化させていたのが、電子カルテの使いにくさ。画面表示がCSV形式(テキストデータ表示)による一覧表示スタイルのため、確認や入力に時間を要し、その作業は大きなストレスとなっていました。まず、この問題を生成AIの活用により、病床マップを患者の状態に応じて色分けし視覚的に分かりやすいユーザーインターフェイスへと改良しました。
さらに、 PCなどのデジタル業務自動化ツールであるRPA(Robotic Process Automation/関連記事:注目テクノロジー解説◎RPA)を組み合わせて、朝の決まった時間に自動的に電子カルテにログインしてアプリが立ち上げるようにしました。
看護師は患者ごとに個別にカルテを開く必要がなく、見やすい画面で患者の状況確認や入力作業をスムーズに行えるようになりました。これにより、業務負荷やストレスの軽減につながったといいます。
武蔵ヶ丘病院副主任の里川雅一氏は、「こうした自動化の事例の多くは、東京の大学病院のような規模の大きな病院での話だと思われがち。しかし我われのような地方の民間病院でもできることを広く知ってもらい、医療に貢献していきたい」と述べています。
評価ポイント/講評など
選考に際して評価されたポイントは、地方の民間病院ながらRPAと生成AIを活用して“小さな自動化”を積み重ね、看護師の検温データ転記作業などを効率化し、現場の負担軽減に直結する具体的な解決策を提示したことです。
審査員の一般社団法人ライトハウスDX支援協会の石川浩司理事長は、「AIを活用し、組織の規模にかかわらず約1年で“ここまでできる”ことを示してくれた素晴らしい事例だ。スキルを持たない全国の参加者にも、勇気と希望を与える事例を共有してもらえたと思っている」と述べました。
武蔵ヶ丘病院の里川雅一副主任は、「当病院がこのような取り組みを始めてから1年未満しか経っておらず、全職員に浸透していないところもある。来年度は役職者だけでなく、一般職員にもこの取り組みを広めていきたい」と次の抱負を述べています。
ダイハツ工業株式会社(大阪府池田市)
現場主導のDX推進に注力しているダイハツ工業株式会社(大阪府池田市)は、「日本デジタルトランスフォーメーション推進協会賞」に選ばれました。
事例テーマ:現場主導のDX推進による業務効率化と多様な人材が活躍できる土壌づくり
ダイハツ工業では、昨今の急激な自動車業界の環境の変化に柔軟かつ迅速に対応するため、2025年秋に「DXに関するビジョン(2023年策定)」のリニューアルとロードマップ策定を行いました。
大企業といえども、デジタルによる変革を進めるのはなかなか難しいものです。時に、その規模の大きさが障壁になることも多々あります。同社では“現場主導”で、かつ“現場が楽になる”ためのDXに取り組んでおり、そのためのアプローチとして「現場での事例づくりと人材育成」や「現場での事例づくりの効率化」、「DX事例の共有化と社内外への周知」を挙げています。
特に、具体的な成果につなげることを最も重視しています。例えば、「DX推進部門のメンバーがDXに前向きな工場に出向き、伴走支援による2か月の研修でAIを作り、それを実装する」という取り組みを示しました。
2か月間の教育期間を通じて、PCに不慣れな現場担当者でも AI を実装できるようにスキルアップさせることで、現場においてキーパーソンを育てるわけです。
2024年度までに100件以上のAI実装の事例を創出しました。この結果、組織の変革や担当者のリスキリングによる考え方の変化へと結びつき、現場で積極的にAIを活用する風土が育まれたといいます。これらのAIを活用し、工場のニーズに合わせたノーコードツールを社内で開発し、各工場で使ってもらう取り組みを進めています。
現場主導でデジタル化を進め、デジタルを使うことで、現場の担当者らが面白く、楽しく仕事することができるよう、働き方を変革していくと共に、こうした取り組みを他工場や他の部門、本社部門へ波及させていく考えです。
評価ポイント/講評など
ダイハツ工業の事例では、工場の現場作業員が自らAIモデルを作成していることなどが評価されました。トップダウンではなくボトムアップでDXを推進することで、現場に蔓延しがちな「やらされている感」を払拭し、自律的に変革を楽しむ組織風土が醸成されている点がポイントです。
審査員を務めたJDX生産性向上部会長の松本国一氏は、同社の取り組みについて、下記のように評価しています。
「大手企業は、組織の規模もまた大きいため、小回りが利きやすい中小企業と比べると、スピーディかつ柔軟にDXを推進するのは、なかなか容易ではないともいえる。その中にあっても、しっかり伴走支援しながらDXを進めていることはすごいこと。また、それを部門長の方々が支援してくれており、それが現場や伴走支援する人たちによい影響を与えるなど、いいサイクルで回っているという点で、DX推進の大きな見本ではないか」。
ダイハツ工業DX推進室 デジタル変革グループ長の太古無限氏は、「これからも現場に寄り添いながら、少しでも現場で働く人たちが楽になるような活動を続けていきたい。また、各種のイベントや社内報などを通じて、外部への周知にも力を入れ、さまざまな場面で事例や得られた成果などを共有したい」と述べました。
株式会社中川(和歌山県田辺市)
“木を伐らない林業”を手掛ける株式会社中川(和歌山県田辺市)は、「セールスフォース・ジャパン賞」と「オーディエンス賞」の2つの賞で選出されました。
事例テーマ:働き方改革とWell-beingと時々林業DX~木を伐らない林業~
中川は、伐採された山を再造林・管理する育林業を中心とする“木を伐らない林業”をビジネスコンセプトとしたベンチャー企業です。もともとは家業のガソリンスタンドを経営していた中で、小さな子供たちと遊ぶ時間を持つなどゆとりのある働き方を追求。新たに“植林を通じて山を持つ喜びを提供するサービス業”という現在のビジネスモデルを構築しました。
現在、山林の管理面積は4200ha強(東京ドーム約900個分)。このリソースを背景に、伐採業者の仕事提供や製材所などへの木材供給を安定的に行っています。また、空き地を利用した苗木の生産や植栽、県内の小中学校への出張授業、山林所有者らへのコンサルティングなども手掛けています。
伐採などの作業では毎朝、20kgの荷物を担いで山へ登らねばなりません。この重労働からの解放を目的に、重量物を運べる林業用ドローン(関連記事:注目テクノロジー解説◎空中ドローン/前編、後編)を自社開発。従来、1時間半を要した往復時間を2分に短縮しました。
こうした林業における働き方の変革で現場負荷は軽減され、男女平等の雇用が可能となったとのこと。他にも積極的な取り組みにより、表立った求人をしていないにもかかわらず、全国から子育て世代が多数集まっているとのことです。
この他、企業間連携により、カーボンニュートラルの達成に向けてJ-クレジット(温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度)の創出に取り組むなど、多彩な活動を展開するなどユニークな活動が目を引きます。
評価ポイント/講評など:セールスフォース・ジャパン賞
「セールスフォース・ジャパン賞」に選出された理由は、J-クレジットなどの新たなビジネスモデル構築を含めて、先進的かつユニークな取り組みが高く評価された点です。
プレゼンターを務めた株式会社セールスフォース・ジャパン 取締役 副社長 ビジネスオペレーション統括の伊藤孝氏は、5年前、和歌山県に白浜オフィスを開設し、地域に根差した植林プロジェクトを行っていることを紹介。「このプロジェクトを支援しているのが株式会社中川だ。今回、非常に難易度の高い現場の仕事で、ドローンを使って劇的に生産性を向上させた事例を紹介しており、DX推進にも貢献していることが素晴らしい」と述べました。
評価ポイント/講評など:オーディエンス賞
オーディエンス賞は、会場で最も共感を集めた企業・団体に贈られる賞で、選出方法も会場参加者による投票です。中川が掲げる“木を伐らない林業”というコンセプトのもと、自社開発のドローンを活用して従来は往復1時間半かかっていた作業を2分に短縮するといった労働環境を劇的に改善した取り組みなどが、会場参加者の共感を集めました。
同社創業者の中川雅也氏は、「現在、最も力を入れているのが男性育休だ。当社の場合、育休を取得した後、奥さんの了解が得られないと職場復帰できない制度を取り入れている」と述べ、男性育休の取りやすさをアピールしました。
また、プレゼンターを務めたJDX代表理事の森戸裕一氏は、「オーディエンス賞には、大会審査員の評価基準が適用されていない。そういう点で、本当に参加者の方々から最も評価されたといえるだろう」と語っています。
資生堂インタラクティブビューティー株式会社(東京都中央区)
デジタルの力により、聴覚が不自由な人たちに美容体験の提供を可能にした資生堂インタラクティブビューティー株式会社(東京都中央区)は、「審査員特別賞」に選ばれました。
事例テーマ:デジタルの力で聴覚障がい者へパーソナルな美容体験を提供~職域拡大も目指す~
資生堂では、パーソナルビューティーパートナー(PBP)と呼ばれる美容部員が、店頭での実習やカウンセリング、SNSやチャットなどを活用したオンラインカウンセリングを通じて、最適な化粧品を顧客に提案しています。PBPの中でも、デジタルを活用し働く場所や勤務時間を自分で決める美容部員はオムニPBPといい、ワークスタイルが変わる中で美容部員と顧客の双方からニーズが高まっています。
例えば、店舗を訪れる顧客のうち聴覚が不自由な人たちから、店頭での筆談は時間がかかって申し訳ない、手話ができるスタッフがいないと意思疎通が難しいなど、コミュニケーションでの不安の声が挙がっており、その対応が求められたことは一つの理由です。
この対策として、オンライン美容相談サービスを導入。聴覚の不自由な顧客が手話やチャットなど、最適なコミュニケーションスタイルを選ぶことを可能とし、場所を選ばずライフスタイルに合わせた柔軟な利用を実現しました。
また、職域拡大を目指し聴覚が不自由な美容職社員2名を初採用。営業職では聴覚に障がいを抱える人材を採用していましたが、美容職では業界初とのこと。さまざまなトレーニングを経て、オムニPBPとして活躍しています。
評価ポイント/講評など
同事例では、チャットや筆談、手話などを組み合わせたオンラインカウンセリングの仕組みを構築し聴覚が不自由な美容部員を採用することで、そういった障がいのある人たちの職域拡大とサービス品質の向上を両立させた取り組みが評価されました。
審査にあたった一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 上席理事の箕浦龍一氏は、同社の発表が、デジタルを使った業務効率化などにとどまらず、より本質的なサービスの質向上や改善に直接的にフォーカスした内容だったことに言及したうえで、次のように講評しました。
「顧客と従業員の双方にとって幸せの向上が実現された、非常に優れた取り組みだろう。また、オンラインを活用することで、聴覚に障がいのある方々に向けたサービスの質を向上させ、さらに職域拡大にもつなげている。デジタルが前提となる事業環境の中で、事業価値をどうやって高めていくかという、改善の好事例だったのではないか」。
同社DX本部 オムニエクスペリエンス推進部 オムニPBP2グループのグループマネージャーを務める山下貴美子氏は、「聴覚が不自由な美容部員は、全国でまだ2名の採用に過ぎない。同賞を励みに今後もまい進していくと共に、化粧品業界全体で、こうした活動が広がってほしい」と述べました。
外部リンク
https://workstyle-transformation-awards.jp/
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