デジタル変革(DX)を学ぶ

2025.03.06 14:20

生成AI◎すぐに使える!プロンプトエンジニアリング講座/前編
テキスト生成の精度アップに欠かせない“5つの要素”

 「中小企業×DX(以下、当サイト)」では、生成AI関連の記事として「Copilot in Windowsから始める“生成AI”入門/全8回」と「画像生成AI入門/全5回」の2シリーズを連載しました。この2つの連載において、テキスト生成ではWindowsの「Copilot(コパイロット)」、画像生成ではOpenAIの「DALL-E 3(ダリ・スリー)を例に、生成AI活用の基礎や実践方法を解説しました。

 今回は、連載を読んで「これから生成AIを使ってみよう」、あるいは「生成AIの活用にもう一度チャレンジしてみたい」と感じた読者向けに、より実践的なプロンプト(指示)のノウハウとして「プロンプトエンジニアリング講座」をお届けします。

 プロンプトエンジニアリング(※)とは、プロンプトの書き方のこと。プロンプトは、生成AIが成果物を作るときの唯一の参考情報です。「プロンプトの書き方=生成AIの使いこなし方」といっても過言ではありません。それほどにプロンプトは大切なのです。

 プロンプトエンジニアリング講座では、前編(テキスト生成AI)と後編(画像生成AI)に分けて、成果物の精度を高める優れたプロンプトに求められる要素を、実例を挙げながら解説します。

 この講座で扱う生成AIは、OpenAIのChatGPTとDALL-E 3を想定していますが、プロンプトエンジニアリングのノウハウやコツは、どの生成AIにおいても使えます。では、前編のテキスト生成から見ていきましょう。

(※)編集部注:プロンプトのノウハウに関連する用語としては、主に「プロンプトエンジニアリング」と「プロンプトマネジメント」があります。ほぼ同じ意味で用いられており、本稿ではより一般的な前者を使うこととします。

テキスト生成AIへのプロンプトに必要な5要素

 生成AIの用途は多岐に渡り、指示の内容もさまざまです。しかし、高精度な成果物を得るためのプロンプトには共通点があります。それは、「必要な5要素の多くが網羅されている」こと。具体的には、次の5つです。

1.文頭に生成AIがこなすべき役割を書く
2.作業の目的を明示する
3.命令と補足情報をはっきり区別する
4.出力形式と必要な項目を明記する
5.「してはいけないこと」より「してほしいこと」を書く

 以下、これら5つの要素について、それぞれ具体例を引用しながら解説していきます。

1.文頭に生成AIがこなすべき役割を書く

 まず、プロンプトの文頭には、会話の中で生成AIが果たすべき役割を端的に示すことがポイントとなります。

 例えば、書いた文章をAIに推敲してほしいならば「あなたは私の文章の編集者です」、あるいはキャリアの相談に乗ってほしい場合には「あなたはキャリアカウンセラーです」といった具合です。

 役割を明示しておくことで、AIがすべきことが自ずと明確になります。その役割の人“らしい”回答を得やすくなるというわけです。

2.作業の目的を明示する

 人間が何かの作業をする場合、その目的をきちんと理解していれば、より効果的に成果を上げられます。生成AIにおいても、それは同じことです。AIに対して、「依頼する作業の目的は何か」を率直かつ明確に伝えましょう。

 ありがちなケースは、「クラウドという言葉の意味を説明する文章を書いてください」といったプロンプトですが、これは悪い例です。もっと具体的に、「小学生にクラウドの意味を説明するための文章を書いてください」とすれば、目的はより明確になります。

 上述の例で「小学生」と書いたように、ペルソナ(属性などを詳細に設定した架空の顧客プロファイル)を設定しておくのも有効な方法です。テクニックの一つとして、覚えておくとよいでしょう。

3.命令と補足情報をはっきり区別する

 詳細に指示をしようとする場合、プロンプトは長く複雑になります。これを避けるために、「#」などの記号を用いて項目ごとに分け、命令と補足情報を区別して記述しましょう。例えば、以下のプロンプトを見てください。
 

あなたはITの専門家です。
クラウドの意味をわかりやすく説明してください。

###条件
・専門用語を使わない
”””

 「専門用語を使わない」という書き方は、否定的な表現です。ここは、「小学生にも理解できるくらい簡単な言葉で書く」といった具合に、肯定的な表現に変えましょう。現在の生成AIは、このようなプロンプトの方が回答の精度が高まる傾向にあります。

5つの要素を満たしたプロンプトの例

 本章では、ここまで説明した要素をすべて満たしたプロンプトの例を、2つ示します。続けてご覧ください。
 

① 記事を書いてもらうためのプロンプト


あなたは「中小企業×DX」というウェブメディアのライターです。
以下の条件に基づき、クラウドの意味について解説する記事を書いてください。

###目的
・クラウドについて、おおまかな概要を理解できる
・クラウドのメリットデメリットがわかる
”””

##読者層
・中小企業社員
・クラウドサービスの導入を検討している
・年齢は20~50代
・男女比は1:1
”””

###文字数
・1500~2000文字
”””

###条件
・「です」「ます」調
・3~4文ごとに段落を分ける
・35文字程度で適切なタイトルをつける
・文中に2~3個の見出しを入れる
・文中の見出しの文字数は30文字以内
・IT初心者にもわかりやすいよう、平易な言葉で記述
・クラウドのメリット、デメリットを明記
”””
 

② 書いた記事を推敲してもらうためのプロンプト


あなたは「中小企業×DX」というウェブメディアの編集者です。
私が書いた以下の記事の本文とその後に続く条件を読んで、修正すべき箇所を指摘してください。

###記事本文
××××××××××
××××××××××
”””

##記事の読者層
・中小企業社員
・クラウドサービスの導入を検討している
・年齢は20~50代
・男女比は1:1
”””

###記事の目的
・クラウドについて、おおまかな概要を理解できる
・クラウドのメリットデメリットがわかる
”””

###条件
・誤字脱字、誤変換、誤った日本語などがあれば、指摘してください。
・冗長な表現や読みにくいと感じる箇所があれば、指摘してください。
・どのような細かな点でも、あなたが修正すべきだと感じた箇所は全て指摘してください。
・修正すべき箇所を明示し、そこをどのように直すべきか、修正案を提示してください。
・修正すべき箇所を、箇条書きにして提示してください。
”””

 これらは、「文章を書かせる」ことと「書いた文章を推敲させる」ことを目的としたプロンプトです。双方とも、先に挙げた“5つの要素”を満たしていることが見て取れるのではないでしょうか。

 まず、「ライター」「編集者」という形で、生成AIに求める役割が明示されています。そして、記事の目的や読者層のペルソナ、出力形式もすべて書かれています。プロンプトの書式は、役割と命令の主旨を冒頭に書き、その後に諸条件を記述しています。

 もっと練ったプロンプトを作りたい場合は、「条件」の記述を増やしていくだけです。もし条件が多くなってしまった場合、例えば記事を書いてもらうプロンプトなら、「文体」「見出しの付け方」といった形で項目を細分化してもよいでしょう。

 ここでは執筆と推敲を目的としたプロンプトを紹介しましたが、目的が変わっても“5要素”が大切なことは変わりません。常に“5要素”を意識しておけば、プロンプトが長文になったとしても効果的な指示が可能です。

 なお、今回紹介した5つの要素は、「可能な限りすべてを満たす」と認識しておきましょう、例えば、長文を要約させるプロンプトの場合は、生成AIの役割を明示するのは難しいかと思います。そうしたケースでは、無理してまで指示する必要はありません。

 後編では、画像生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングについて見ていきましょう。テキスト生成と画像生成とでは、プロンプトに必要な要素が異なります。ぜひ続けてお読みください。
 

ここがポイント!
●プロンプトの文頭で生成AIが果たすべき役割と、依頼する作業の目的を明示する。
●「#」などの記号を使い、命令と補足情報をしっかり区別する。
●回答の出力形式を指示する。
●箇条書きや表形式の場合は、必要な項目を指定する。
●「してはいけないこと」より、「してほしいこと」を書く。
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