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2024.04.30 12:00

建設業DX◎建設・工事現場の省人化&省力化
2024年問題を解決!厚み増した業務効率化ソリューション

 長時間の現場作業が多い建設業界では、時間外労働時間(残業時間)の上限規制が適用されることでさまざまな弊害が生じる「2024年問題」に直面しています。

 その対応策として、デジタル技術を活用した正確な勤怠管理や現場作業の省人化・省力化などが欠かせません。それゆえ、ITベンダーから多様な製品やサービス、ソリューションが提案されるようになりました。

 これらのテクノロジーの採用により、中小規模の建設会社や下請け業者、専門工事業者(とび職や大工などの技能労働者)は業務効率の大幅な改善や生産性向上を実現でき、現場のDX推進に弾みがつくものと期待されています。

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時間外労働時間の上限規制が適用されたことで、建設業界でもその対応が急がれる

人手不足に拍車をかけた残業規制

 建設業における2024年問題とは、2024年4月からスタートした時間外労働時間の上限規制の適用に伴う諸問題の総称です。

 もともと時間外労働の上限規制は、働き方改革の一環として労働基準法が改正されたものです。2019年4月から同規制の適用が始まりました(中小企業は2020年4月から適用開始)が、自動車運転業務(物流や運送、バス、タクシーなど)や建設業、医師などに対しては長時間労働が求められる業務形態や取引の慣習などが考慮されたため、5年の猶予期間が設けられていました。

 この猶予期間が2024年3月末で終了し、これらの業界にも4月1日から残業時間の規制が適用されるようになったことで、従来から懸念されていたさまざまな課題が大きくクローズアップされているのです。

 建設業では、原則として残業時間の上限は月45時間/年360時間までとされています。臨時的な特別の事情により労使が合意した場合でも、年720時間以内、休日労働と合わせて月100時間未満、2~6か月間で平均80時間以内とし、月45時間を超える場合も年6回が限度となっています。(*1)
(*1)災害時における復旧・復興事業については、時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満、2~6か月間で平均80時間以内の規定は適用されない

 建設業界は労働人口の減少や専門工事業者など現場作業の担い手の高齢化に加え、いわゆる「3K(キツイ・汚い・危険)」職場のイメージから若者の入職率は低く、若手を中心とする人材不足が慢性化しています。

 このことに加えて、工事のスケジュールは天候不順や予期しないトラブルの発生などで後ろ倒しになりやすいこともあり、残業や休日出勤といった長時間労働が常態化してきました。

 昨今は働き方改革の一環で各社は週休2日制の導入などにより待遇改善に取り組んでいますが、中小規模の地元建設会社や下請け業者、建設資材会社、専門工事業者らは長年の取引慣習もあって対応は進んでいませんでした。

 こうした状況下で、建設業にも時間外労働時間の上限規制が適用されました。この結果、現場では慢性的な人手不足と相まって工期遅れをさらに引き起こしやすくなり、ひいては建設工事費の上昇を加速させることが懸念されます。また、労働時間の減少は、それまで残業代で稼いでいた運転手や現場作業者、技能労働者などの収入減少の問題を引き起こしかねません。

 現場での作業や業務の効率化は喫緊の課題であり、安全に配慮しながら早期に省力化や省人化を実現することが求められているわけです。

建設業界「2024年問題」の認知は7割に及ぶも取組成果の実感は約2割

 残業抑制の取り組みを進めており、その効果を実感しているのは全体の23.4%にとどまった――。クラウド型建設プロジェクト管理サービスを手掛けるアンドパッド(東京都千代田区)が建設業従事者を対象に実施した、時間外労働時間の上限規制に関するアンケート調査の結果では、残業抑制への取り組みがあまり進んでいないことが明らかになりました。

 同調査によると、回答者のうち67.1%が時間外労働時間の上限規制について認知しており、43.9%が残業抑制に取り組んでいる状況でしたが、その効果を実感できているのは全体の4分の1に達していません。

 残業抑制への取り組み内容では、「労働時間・残業時間の管理」「週休2日制の導入」「退社時間の呼びかけ・声がけ」などの回答が多かった他、「DX化(業務効率化のためのITツールやシステムの導入)」については約4割が行いたいと回答しました。また、調査対象の経営層の約半数が、DXは重要と回答しており、DXによる業務効率化は現場だけでなく経営層からの要望も強いとがうかがえます。

 また、取り組みが進まない理由として、工期優先といった業界特有の事情以外に、「IT化が遅れアナログな手法が当たり前になっている」「取り組みを推進する役割の人材がいない」という声も。

 前年秋の調査のため、残業抑制への取り組み自体は進んでいると思われます。しかし、DX化あるいはデジタルシフトはあまり進捗していないとの声も漏れ聞こえており、経営者や現場は強い危機意識をもって取り組む必要がありそうです。

出典:株式会社アンドパッド「時間外労働の上限規制調査」(2023年:https://andpad.co.jp/news/4464/)

実作業と管理業務の両面で進むデジタルシフト

 こうした背景下、建設業界の2024年問題の解決を後押しすべく行政はプロジェクトを推進し、ITベンダー各社は建設現場の業務を効率化するさまざまなサービスやソリューションを提供。特に、デジタル技術を用いたソリューションが増えて厚みが出てきました。

 以下では、現場における工事作業と管理業務それぞれで、どのようなサービスやソリューションがあるのか、具体例を挙げて見ていきましょう。

 まず、現場の工事作業に関しては、省人化・省力化が重要といえます。これについては、デジタル技術を搭載した「ICT建設機械」の活用が進みつつあります。例えば、国土交通省では2016年から建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction(アイコンストラクション)」に取り組んでおり、2021年からは同プロジェクトを拡大させた「インフラ分野のDX」の推進に本格的に注力しています。

 その中で、ドローンを用いた3次元測量技術やICT建機を用いたICT施工の普及拡大を進めており、将来的な無人施工やAIを活用した自律型施工などを目指し、さまざまな研究開発に取り組んでいます。例えばローカル5Gの無線通信環境下で複数台の建機を一人のオペレーターが遠隔で操作することができれば、大規模な災害発生時に現場に作業者が入れない状況でも、遠隔操作により建機が応急措置をすることが可能になります。

 国交省では、傘下の国土技術政策総合研究所などと連携して茨城県つくば市に研究施設「建設DX実験フィールド( ※関連記事:「建設業DX◎建設DX実験フィールド)」を設置し、ICT施工をはじめ、さまざまなインフラ分野のDX推進に向けた研究開発に取り組んでいます。

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業務効率化ソリューションの充実を背景に、建設現場のDXを目指した取り組みは着実に進んでいる

 一方、管理業務に関しては大手からスタートアップまで幅広いサービスが提供され、効率化に向けたソリューションの厚みが増しています。

 例としては、現場作業者の入退室管理が挙げられます。勤怠管理システムを導入して入退室情報をデジタルデータで一元管理することによりアナログ作業に比べて業務効率は大幅に改善し、手書きの情報よりも確度も高まります。

 働き方改革関連法の施行を背景に、特に同分野では多様なサービスやソリューションが提供されているだけに、デジタルシフトへの入り口として取り組みやすいのではないでしょうか。

 現場管理のうち、効率化への要求が特に強い業務といえば煩雑な作業が多い施工管理でしょう。これについては、膨大な現場写真の撮影・記録・整理、報告書や図面・関連資料の作成などに関するさまざまな情報をクラウド上で一元管理できる施工管理システムを採用する企業が増えています。

 特に、スマートフォンベースの施工管理システムへの注目度が高くなっています。同システムを活用することで、例えば現場監督は現場写真や資料整理、報告書作成といった業務を簡潔かつ迅速に行うことができ、本来の業務に集中できるようになります。さらに関係者と現場の地図や周辺情報、作業報告などの情報をリアルタイムで共有することで、連絡事項の伝達漏れを防ぎ、トラブル防止に結び付けられるなど、大幅な業務効率改善の実現が可能です。

遠隔管理でクラウド型カメラが活躍

 さまざまなデジタル技術が用いられている中、映像を活用したソリューションへの関心が高くなっています。例えば、コンパクトなクラウド型の録画カメラを活用した遠隔からの現場管理は、離れた場所から現場の施工状況や作業の様子などをリアルタイムで確認できるので、実作業と管理業務の両面から効率化を実現することも可能です。

 カメラの技術も進化しており、1台で現場全体を広範囲に撮影できるカメラが開発されています。従来は撮影可能な範囲に限界があり、現場全体、建物の天井や床下などの施工状況を見たい場合、複数台のカメラを現場に設置する必要があった他、1台で天井などの細部を詳しく見ることは困難でした。

 これに対して、ほぼ全方位を見られる広範な視角を備えたカメラは、広範囲の映像から現場の施工状況を隅々まで把握することができます。これにより、現場作業者の入退室や安全の確認、現場でのトラブルの有無なども映像から判断できるといったメリットがあります。

 進化したカメラは、さらに他の技術と組み合わせることで多様なサービスやソリューションが登場しています。映像を用いた顔認証方式による入退室チェックやドローンによる遠隔巡視などは、その好例といえるでしょう。

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クラウド型カメラを用いたソリューションも増加している(画像:第3回建設DX展より)

 また、こうしたサービスをAIと融合させた高度なシステムの開発も進んでいます。例えば、現場に設置したカメラで撮影した映像から画像認識AIモデルが現場の危険を察知して、重機の可動範囲に人が立ち入った際に操縦者に警告を通知するといった仕組みは、現場の安全と省人化の両立に極めて有効といえそうです。

 ChatGPTなどに代表される生成AIを用いたシステムの開発は、ますます活発の様相を呈しており、同テクノロジーを搭載したソリューションの現場での採用が一段と進んでいくものと予想されます。

 建設市場は堅調に推移していている一方で、慢性的な人手不足に見舞われています。残業規制の適用は、この問題をさらに深刻化させることは間違いないでしょうが、その解決策として続々と登場する現場業務を効率化するソリューションに期待したいところです。

 
ここがポイント!
●建設業界では、残業時間規制の適用で懸念される深刻な人手不足である「2024年問題」への対応が喫緊の課題。
●2024年問題の解決支援に向け、デジタル技術を活用した現場の業務効率化ソリューションが増加。
●工事現場の実作業ではデジタル技術を搭載した建機を用いたICT施工が、現場の管理業務については多様なデジタルサービスが効率化を支援。
●クラウド型広角カメラの映像を活用した遠隔管理・監視ソリューションに高い関心。

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外部リンク

アンドパッド「時間外労働の上限規制調査」(2023年)
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