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2026.07.22 10:00

展示会ポート◎建設DX展+(プラス)
建設現場の日常業務にもAIが本格実装されるフェーズに突入

 2026年7月1日から3日にかけて、東京ビッグサイト(東京国際展示場/東京都江東区)で、「建設DX展+(プラス)」(主催:RX Japan)が初開催されました。

 同展示会は、建設業界向けのデジタルツールやDXソリューションを紹介する「建設DX展」から派生したもので、DXやAIなどをキーワードとした先端技術を用いた課題解決ソリューションに特化した展示会です。

 会場には、BIM(Building Information Modeling)をはじめ、CADや工程・図面管理システム、ICT建機・遠隔操作、測量機器や3Dレーザースキャナ、建設ロボットといった多様な製品やサービスが集結。建設構造物の3Dモデルに設計データや施工方法などの属性情報を持たせ、建設プロセス全体で活用するBIM、AIなどの先端技術を用いたソリューションなどが注目を集めていました。

初開催の「建設DX展+(プラス)」。(編集部撮影)

 建設DXの推進を目的に、先端テクノロジーを用いたソリューションに寄せた展示会ということもありますが、会場全体からは建設DXが実証段階から普及段階へ移行しつつある雰囲気が見てとれました。単にAI機能を搭載しているという時代は過ぎ、実務に直結するAIソリューションにより建設現場の日常業務にAIが本格実装されるフェーズに入ったということです。

 以下、「積算AI」や「計測・測量の高度化」、建設業の分野で特に注目されている「XR(Extended Reality:現実世界と仮想世界を融合する技術)」といった先端テクノロジーなどをキーワードに、展示会から見えた建設業界におけるDX・AIの最新動向をレポートします。

AIが代替!建設図面の検索・解析から積算まで

 展示会場の入口には、本展示会のWebサイトにおいて出展社や製品の閲覧件数が多かった上位5社とその製品を紹介した「注目製品ランキング」のパネルが設置されていました。

 ランキングのうち3件を「積算AI」に関する製品やサービスが占め、あらためて積算関連の業務効率化に対する関心の高さが見てとれました。

展示会のWebサイトで検索回数が多かった「注目製品ランキング」では、積算AIに関する製品への関心度が高かった(編集部撮影)

 建設業界は、まだまだアナログ作業が多い領域です。例えば、建設工事に必要な図面は、内部空間や外観のデザインから各種設備、構造まで多種多様で、さらに平面・立体・断面図も必要です。

 過去の図面を参照するうえでは、社内に多数蓄積されている紙ベースまたはデータの図面を探す手間を要します。設計図に加え、仕様書や、建物などの安全性を証明する構造計算書、さらには施工現場での指示や注意点をまとめた説明書など、設計図書と呼ばれる書類一式が必要となるなど、建設業務には膨大なドキュメントや資料が関わってきます。

 建設費用の見積もり計算(積算)では、こうした膨大な図面や資料、ドキュメントをもとに、熟練の設計者や技術者が数十枚にも及ぶ図面間の整合性や各種の法令・設計基準などとの適合性をチェック(検図・照査)します。さらに、使われる部材の種類や数量を数え上げる数量拾いといった作業に取り組まなければなりません。

 こうした煩雑で手間のかかる作業を大幅に短縮するソリューションとして注目されているのが、「積算AI」です。アップロードしたPDFファイルの図面をAIが読み取り、検図・照査、数量拾いから積算まで自動対応を可能とするもので、大幅な業務効率化が期待されています。展示会場でも、多くのベンダーが積算AIを紹介していました。

電気設備工事向け特化の積算AI:Prefab

 東京大学発スタートアップ企業の株式会社Prefab(プレファブ)は、独自の画像認識基盤「Tera Engine」を活用した図面の積算AIを紹介しました。電気設備工事向けに特化し、各種の建設・工事図面から、部材の数量や経路の情報をAIが自動で読み取り、照明・コンセント・配線などの認識を自動化できます。

 これにより、熟練技術者が数日あるいはそれ以上の時間をかけていた拾い出し作業を大幅に短縮できるとして、大手のサブコンを中心に導入が進んでいるとのことでした。

 同基盤をベースとした電気設備工事の図面向けAI積算SaaSツール「Tera拾い」は、電気設備工事のPDF図面をアップロードするだけで配線や電気設備のシンボルや凡例、系統図、表といった必要項目をAIが自動で認識・積算し集計表を出力します。同社によると、「他の積算代行サービスと比べ、30%のコスト削減、40%の納期短縮が実現可能」としています。

積算AI「Tera拾い」の提供や、積算代行サービスを手掛けているPrefab。ブースには多くの来場者が訪れ、熱心に担当者の説明を聞いていた(編集部撮影)

 こうした理由から同社の積算AIは、前述の「注目製品ランキング」でトップにランクするソリューション。その注目度の高さから、「ランキング結果の反響がとても大きく、入口でパネルを見てブースに足を運んでくれるケースが増えている。今後は、設計工程の自動化や、電気設備だけでなく空調や機械設備などへの横展開も検討していきたい」(ブースの説明員)とのことでした。

さまざまな積算AIソリューション:KK Generation/ビルドAI

 株式会社KK Generationは、建設図面をAIが読み取り自動で部材の数量拾いを行う積算AIを紹介しました。複数の設計図書をAIが横断的に解析し、高精度に読み取って必要な情報を自律的に抽出して統合することで、見積書まで自動で作成が可能です。

 建設図面の認識・生成AIプラットフォームも紹介しました。このプラットフォームは、四つのソリューションで構成されています。現況図や軀体(くたい)図をもとに概算見積もりを作成する「図面生成AI」、「検図照査AI」、数量拾いや見積書の作成を自動化する「積算AI」、2次元の設計図書一式から座標・属性情報を抽出してBIMに変換する「BIM生成AI」です。

 このプラットフォームを活用することにより、企画・設計・積算・施工を一気通貫で自動化できるとしています。

 また、ビルドAI株式会社も、「数量拾い・積算AI」「図面検索AI」「検図・照査AI」「要件チェックAI」という四つのAIで構成された建設図面AIソリューション「Build AI」を紹介しました。このうち数量拾い・積算AIは、従来まで目視と手作業だった数量拾い業務の工数を大幅に減らし、積算業務全体の効率化を実現しています。

ビルドAIは、出展者セミナーで建設図面AIソリューション「Build AI」などを紹介。同社に限らず、積算AI関連のソリューションは多くの来場者の関心を集めていた(編集部撮影)

 AIを用いて図面を高精度で読み込むという技術は、以前からAI機能の特徴として訴求されてきました。展示会場で積算AI製品を紹介したベンダーは、いずれも“図面を読むAI”から一歩踏み込んでおり、“積算・見積もりまで自動化するAI”といったように、新たなフェーズへ競争軸が移っていました。これにより、同分野の機能進化が加速するのではないかと推察されます。

3DデータやAIが計測・測量の高度化を推進

 計測・測量分野では、3Dデータを活用して機器の高機能化・高精度化や小型・軽量化を図るなど、AIなどの先端技術を活用して業務効率化を実現するソリューションや製品・サービスが紹介されていました。

スマートフォンが高精度測位端末に:レフィクシア

 東京工業大学(現・東京科学大学)発ベンチャーであるレフィクシア株式会社の高精度位置測定(測位)端末「LRTK Phone」は、重さが165g、薄さは1cmと非常に小型・軽量タイプの万能測量機です。

 この端末の装着によりiPhoneを、1~2cmレベルの高精度な測量機として活用できるようになります。3次元点群のスキャンにも対応でき、cmレベルの精度で現場にAR投影するなど、さまざまな機能を1台のスマートフォン上で実現可能であり、専門知識がなくとも高精度な測量を可能とします。

 ブース担当者は、「当社の製品は自治体や水道局などに多数納入され、土砂崩れや配管の調査などに使われている。それほど高精度な測量が求められていない分野や用途では、従来の測量機から現場で手軽に当社製品に置き換わりつつある」と語っていました。

単独での現場調査作業を実現:nat

 nat株式会社の3Dスキャンアプリ「Scanat(スキャナット)」は、現場調査作業の効率化を実現するもの。iPhoneやiPadに組み込まれているLiDARセンサー(レーザー光を用いた測定方式)を使い、対象をなぞるだけで現場を3Dスキャン/計測できるAI測量ツールです。

 メジャーを使った従来の現場調査作業では、計測のために少なくとも二人以上の人員が必要でした。しかし、スマートフォンが1台あれば、一人で計測業務を進められる同社のアプリケーションは、省人化ソリューションとして大いに注目できそうです。すでに、有料導入社数は、建設会社や自治体など累計900社以上に達するとしています。

軽量の高性能3Dスキャナ:神戸清光

 測量・計測機器の専門商社である株式会社神戸清光は、同社が正規代理店となっている中国XGRIDSのカメラやスキャナを出展しました。XGRIDS社は、大手ドローンメーカーである中国DJIのメンバーがスピンアウトして設立された会社とのこと。

 展示の目玉は、軽量の高性能3Dスキャナ「Lixel K2」です。実環境での使用を想定したデータ収集効率と使いやすさ、高品質なデータ提供を実現した質量1,200gという軽量モデルであり、壁面や窓、ドアなどの設計・施工にそのまま使える1cm以内の測定精度で出力できる実用的な製品となっています。

 また、ハンディタイプの3Dスキャナ「Lixel L2 Pro」は、独自のアルゴリズムにより写真品質のカラー点群をリアルタイムで生成可能にしたもの。複雑な環境でも安定した自己位置の推定と高密度なスキャンを両立させていることが特徴です。

神戸清光が取り扱っている中国XGRIDS社の製品群。左から携帯型の小型空間カメラ「PortalCam」、軽量の高性能3Dスキャナ「Lixel K2」、ハンディタイプの「Lixel L2 Pro」(編集部撮影)

ロボットで墨出し作業を効率化:トプコン

 株式会社トプコンは、正確な位置情報が欠かせない建築施工の位置出し・計測を手軽に、かつスマートに行える多彩なソリューションを紹介しました。

ブースでは、設計図に示された寸法や基準線を、主にチョークや墨汁を用いて、実際の建物や施工現場に正確に描き写す墨出し作業を自動化・省人化するデモを実施しました。

 杭打ちや測量作業を一人で効率的に行える小型測量機器「杭ナビ(LN-1000i)」と、コンパクトな自動墨出しロボット「HP SitePrint」を連携させ、ロボットが走行しながら高速・高精度に墨出しを行い、設計図面データをそのまま床面に再現。搭載されたAIで最も効率の良いルートを選定するなどして、墨出し作業の生産性を最大10倍向上できるとしています。

トプコンは、墨出しロボット「HP SitePrint」と測量機器「杭ナビ」を連動させることで、自動で高速・高精度な墨出しを可能とした。画像はデモンストレーション時(編集部撮影)

DX・AIで調査・診断・点検業務を高度化

 建設構造物やインフラの老朽化に伴い、これらの調査・診断・点検のニーズも高まっています。国土交通省では、特に道路や橋、トンネルといったインフラの長寿命化に向け、5年に一度の定期点検を義務化しています。  そうした中、2025年に発生した埼玉県八潮市での道路陥没事故を契機に、下水道管の緊急点検や路面下空洞調査が行われました。全国のインフラの老朽化対策は急務であり、そのための調査・診断・点検の業務も欠かせません。この領域においても作業効率の向上や省人化のため、DX推進やAIの活用が進められています。

 例えば、点検においては、熟練技術者による近接目視点検だけでなく、昨今は画像処理技術やAIを活用した高速・高精度な点検や、ドローンの飛行による高所や危険個所の点検も注目され、そうした新技術の採用が拡大しつつあります。

狭小空間の点検が可能な小型ドローン:ドローンスポーツ

 インフラ設備の点検用途を中心とする産業用ドローン事業に注力しているドローンスポーツ株式会社は、最小300mm径の狭小空間に進入可能な点検用小型ドローン「Rangle Pro」を実機展示しました。 この製品は、同社の国産ドローンブランド「Rangle」シリーズの新モデルであり、ホバリングアシスト機能を刷新。これまで、非GPS環境下での点検用ドローンの操作に習熟するには3か月から半年程度のトレーニング期間を必要としました。Rangle Proでは、これを新しいホバリングアシスト機能により最短で3日に短縮。旧モデルと比較して習熟コストを約97%削減可能としています。  同社が運営するドローンレースチーム「RAIDEN RACING」は世界最高峰のプロリーグDrone Champions Leagueで三連覇を達成するなど、世界トップレベルの操縦技術を有しているとのこと。その技術や知見が産業用ドローンにも生かされているようです。

小型点検用ドローン「Rangle Pro」。機体サイズが幅233×奥行き255×高さ88mmで、重量は680g、飛行時間は10分、通信可能距離は400m(編集部撮影)

 最近では、埼玉県八潮市での道路陥没事故を背景に下水道の点検が急務になったこともあり、引き合いが急増しているとのこと。ブース担当者は、「機体が小型で操作も簡単だ。このため、点検時に(機体が通れない、行きにくいなどによる)未調査区間が生じにくいのも大きな特徴である」と語っています。

地中埋設物の掘削前探査を実現:ジャスト

 株式会社ジャストは、既存構造物の耐震・劣化診断をはじめ、さまざまな調査・診断・点検サービスを紹介していました。

今回の展示会におけるメインは、大規模なリニューアル工事などで必要とされる掘削前の高精度な地中埋設物探査サービスです。図面や目視での調査に加え、電磁誘導法や電磁波レーダー法を組み合わせた複合的な取り組みにより、掘削前に地中埋設物の位置や深さを高い精度で把握するものです。

 これにより、配管・空洞・残置物を事前に把握し、図面とのズレによる事故リスクや工程遅延を低減し、埋設配管の損傷事故を防止する狙いです。

ジャストは、地中埋設物探査機(マルチチャンネル型3D地中レーダー/画像)を用いた地中埋設物探査サービスを紹介した(編集部撮影)

XR技術が現場作業を劇的に変革

 AI技術を取り入れたソリューション全盛の中、別のテクノロジーとして興味を覚えたのがVR(仮想現実)やMR(複合現実)といったXR技術です。特に建設や製造業の現場系業務では、今後、XRのような技術が大いに役立つと見られているからです。実際、今展示会においても、XRの活用は着実に増えつつあると感じました。

 XRの大きなメリットは、言葉や紙の図面で説明するのが難しい現場のイメージが、直感的に理解しやすく、しかも正確に伝えられること。これは現場作業の効率化だけでなく、技術や技能の伝承にも寄与します。会場でも、そうした映像技術を用いた製品やソリューションが紹介されていました。

XRにより図面を現場で直接投影:インフォマティクス

 株式会社インフォマティクスは、CAD図面や3Dモデル、BIMデータをAR/MR表示するパッケージソフトウェア「GyroEye(ジャイロアイ)」を出展しました。

 GyroEyeは、iPad/iPhoneや「Meta Quest 3」などのビューワ(ヘッドセット)と組み合わせて、CADデータを現実空間に実寸大で投影するシステムです。通常のCAD情報をそのまま活用でき、複数の2D図面と3Dモデルを組み合わせたAR/MRモデルに変換します。

 CAD図面や3Dモデルを空間に原寸大でAR表示できるので、手元にある図面と現場を見比べる必要がなく、図面データを重ね合わせた現場を見ながら効率的に作業を進められます。

 これまで、180社を超える建設業関係の企業に採用されており、導入実績は他社を圧倒しているといいます。「作業が楽で非常に早く終わるので、一度体験してしまうと以前のやり方には戻れないという職人さんも少なくない」とブース担当者。発注者へのプレゼンテーション、工事関係者とのレベル合わせ、出来形の確認、点検・検査、遠隔支援など、さまざまな場面で同システムの普及拡大が期待できそうです。

インフォマティクスのGyroEyeと関連システム(編集部撮影)

XRとロボティクスの連携:ホロラボ

 株式会社ホロラボは、3DCADやBIMで作成した設計データを自動でAR/MRに変換する製造業・建設業向け可視化ソリューション「mixpace(ミクスペース)」、XR技術によるデジタルツイン・マルチプラットフォーム「torinome(トライノーム)」などを紹介していました。

 展示ブースで注目を集めたのは、これらのソリューションを小型ロボットアームと組み合わせたデモンストレーション。ヘッドセットを装着した人間の動作と小型ロボットアームが連動して動作する仕組みです。ブースでは、人が手で物をつかむと、ロボットアームも同じように動作することを実演しました。

 コントローラーを使わず直感的にロボットを操作できるようになれば、ロボット操作の習熟ハードルが大きく下がるのではないでしょうか。

ホロラボは、ヘッドセット「Meta Quest 3」を装着した人間の動作と連動して、3Dプリンターで製作した小型のロボットアームが物をつかむ体験型のデモンストレーションを実演した(編集部撮影)

 ブースの説明員は、「高所や暑中の現場、災害現場など過酷で危険な場所での作業に向け、ICT建機/重機や作業用ロボットを遠隔操作することを目指している」といい、「今回のデモンストレーションを通じて多くの人に、こうしたアプローチに対する興味を持ってもらいたい」と語っていました。

安全管理の分野でもDX推進が顕著に

 建設工事の現場では作業の効率化などもさることながら、危険が伴う作業なだけに安全確保は欠かせません。例えば、作業員の安全な作業エリアを確保する足場のような仮設設備や、コンクリート用型枠(コンクリート成形用の部材)など、縁の下の力持ち的な存在の周辺部材や設備が多数使われています。

 こうした領域は目立たないものですが、現場業務として安全性の担保は非常に重要です。展示会場では、このような分野においてもAIソリューションによるDX化が進んでいることがうかがえました。

廃プラを再資源化し3Dプリンターで型枠を製作:DigitalArchi

 ユニークだったのは、建築系スタートアップ企業の株式会社DigitalArchiが出展していた建築用コンクリート型枠や内外装パネル。いずれも、独自開発の大型3Dプリンターと廃棄プラスチック(廃プラ)を活用して製作したものだそうです。

 職能工の不足や建築コスト削減といった問題に対応するには、型枠製作の時間短縮も解決すべき課題の一つといえます。この点、自社開発のソフトウェアにより設計期間を短縮し成形済みの型枠を提供する同社の取り組みは、現場の施工性を大幅に向上させると共に、使用済み型枠を回収し再資源化するためコスト抑制にもつながります。

 型枠製作の合板加工からコンクリート打設まで、従来の木製型枠を用いた工法と比べて、約80%の作業時間の短縮が可能とのことです。

DigitalArchiは廃プラを再利用し3Dプリンターで製作した型枠を展示。製作可能な最大寸法は幅1,800×奥行き900×高さ1,500mm(編集部撮影)

 また、3Dプリンターの活用により、既存の型枠では成形が困難だった複雑な形状にも対応し、軽量ながらコンクリートの側圧や複数回の転用にも耐えられる強度を備えています。

 同社の“デジタル型枠”は、住宅外構の曲面花壇、商業施設の大屋根の湾曲スラブなど、柔軟なデザイン性が求められる分野でニーズが高く、2026年春に完成した複合施設「MAZAKA(神奈川県川崎市)」の建設でも大規模な湾曲スラブの製作に使われました。

運搬コストの低減を目指す移動式天井足場:大興物産

 大興物産株式会社は、天台に乗ったまま移動可能な移動式天井足場を実機展示し、実際に足場が移動するデモンストレーションを行いました。この足場は、スマートフォンで音声操作が可能なほか、リモコン操作にも対応しています。

 標準で手すりや昇降タラップが付いており、安全性や安定性にも配慮されていました。内装工事などで多数敷き詰める足場の部材量を減らして運搬コストを低減できるほか、上下階の移動の手間や距離を減らせるメリットもあるとのことです。

大興物産の移動式天井足場。スマートフォンでの音声操作などに対応している点がデジタルシフトの一環といえる(編集部撮影)

現場の安全管理を支援:EARTHBRAIN

 株式会社EARTHBRAIN(アースブレーン)ランドログカンパニーの「安全支援アプリ」は、現場の写真から生成AIが事故の詳細・対策・類似事例・関連法令を分析することで、現場の危険性を発見し安全管理を支援します。

 現場の写真を撮影するだけで、危険個所や関連法令が画面上に表示される仕組みで、現場の巡回者の経験や知識に依存しない安全パトロールが可能です。

 また、AIの分析結果をもとに対策するべき箇所を共有できることも大きなメリットでしょう。現場の写真を見ながら、その場で法令関連の安全教育ができるといった具合に安全管理の質向上が図れます。

EARTHBRAINは「安全支援アプリ」以外にも、測量・点群処理AI「Smart Construction Edge」や、仮設道路の3DモデリングAI「Smart Construction Design3D」などを提供。同社製品間でのデータ連携も可能という(編集部撮影)

その他、注目のソリューションや取り組み

 ここまで積算AIや測量、安全管理といった建設業界における課題を解決するソリューションや、XRなどの先端技術を用いたサービスなどの最新動向を展示企業の訴求ポイントから見てきました。この他にも、多くのベンダーがAIやクラウドをいかして独自性や強みを打ち出そうと各ブースで、さまざまなソリューションやサービスを展開しています。その一部を紹介しましょう。

AI軸にプラットフォーム化を推進:Arent

 システム開発と自社開発製品のパッケージ販売を軸に事業展開している株式会社Arent(アレント)は、「昨年来、M&Aや自社プロダクトのリリースに注力」(ブースの説明員)することにより、グループの力を駆使した多彩な製品群を展開しています。

 実際、ブースでも製品展開力は目を引くものがあり、AIが工程実績から最適な工程を自動生成するクラウド工程管理システム「PROCOLLA(プロコラ)」や、BIM専用設計ツールとして普及する「Autodesk Revit(*2)」向けにアドイン型AIアシスタント「LightningBIM AI Agent」をはじめ、「LightningBIMファミリ管理」や「LightningBIM自動配筋」などを展開。
(*2)建築設計、MEP、構造エンジニアリング向けのオールインワンソフト

 さらに、P&ID(配管計装図)解析から3Dモデル設計までをAIがサポートし、全体の設計工数を大幅に削減できる配管設計ツール「PlantStream AIDE」なども紹介していました。

 今後、「当社グループに加わった会社の既存製品にもAIを導入し、製品を進化させていく。そうした製品群を連携し、グループ全体で各製品がシームレスにつながるようにしていきたい」(ブースの説明員)と、AIを軸に同社が扱う一大ラインアップのプラットフォーム化を視野に入れています。

Arentのブースでは、グループ会社を含めた多彩な製品群を紹介していた(編集部撮影)

化学物質のSDSをクラウドで一元管理:ケミカン

 株式会社ケミカンは、建設構造物や建設資材に使われる材料などの安全データシート(Safety Data Sheet:SDS)をデータベース化し、さまざまな関連業務を支援するクラウドサービス「ケミカンSDS管理」を紹介しました。

 同サービスは、各種の法令に該当する化学品や化学物質の特定やリスクアセスメントの業務効率化を支援するもの。国内外50以上の最新法令に対応しており、規制対象物質を自動でリスト化するなど、リスクアセスメント関連の業務工数を大幅に削減できるのが大きな特徴です。

 ここ数年、化学物質の規制は厳しくなっており、2026年には危険・有害性のある“すべての”化学物質に対して、SDS交付とリスクアセスメントの実施が義務付けられました。

 SDSの交付義務も、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の分類で危険有害性が確認されているすべての化学物質が対象になり、その数は数万種に及ぶとされています。

 業種や案件によって、実際の該当物質はもっと少ないでしょうが、従来の紙ベースでのSDS管理は困難になると予想されます。

 こうした背景を鑑みれば、同社のクラウドサービスを活用することでSDSの管理が容易になると共に、危険有害性に関する早期の対策が取れると見込まれます。特に、こうした規制への理解があまり浸透していない中小規模の企業にとっては、有効な管理方法の一つとなりそうです。

ケミカンは、膨大な化学物質のSDS管理を効率化するクラウドサービスを紹介した(編集部撮影)

すべての業務をシンプルに:現場Hub

 現場Hub株式会社は、工事・メンテナンス会社向けのクラウド型業務管理システム「現場Hub」を紹介しました。

 同社によれば、「現場の管理業務では転記作業の重複や、仕事と情報の属人化、過去の現場情報の未活用といった課題があり、この要因は業務フローごとに使われているツールがバラバラであること」です。

 これを解決するのが現場Hub。スケジュールから案件管理や勤怠管理、報告書・日報の作成、契約管理、原価管理、見積もり、請求・支払い管理、受発注などに至るまで、現場の主要な業務の一元管理により、案件ごとの進捗が一目瞭然です。

 「工事の管理業務は紙やExcel、LINE、ホワイトボードを使って現場を回しており、業務効率が悪い。現場からバックオフィスまで必要な業務は現場Hubで完結する」(ブースの説明員)。

現場Hub。ワンツールですべての業務管理がシンプルに集約される利便性は非常に高い(編集部撮影)

古い資料をデジタル化:倉敷紡績

 倉敷紡績株式会社は、販売・業務提携先であるドイツのZEUTSCHEL(ゾーチェル)社が手掛ける高耐久性A1サイズ対応のオーバーヘッドスキャナ「OS C1」を実機展示しました。

 建造物の修繕や改修工事などでは、過去の古い図面を参照する必要があります。その多くはA1サイズの大判紙であることが多く、古い資料ともなれば劣化や傷みが進んでいるものもあり、慎重な取り扱いが求められます。

 これらをデジタル化することで保存性や活用の利便性が高まることは間違いないでしょう。OS C1は、A1サイズの古い建設図面の高速(300dpiの場合で約3.8秒)な電子化を可能とするもの。スキャン原稿を非破壊で読み取れるオーバーヘッド型(本体上部のカメラで紙面を撮影する)タイプです。

 また、「経年劣化などによる黄ばみが原因で、線がよく見えない青焼きの図面でも、当社が開発した画像処理ソフトで補正できる」(ブースの説明員)ことなどが特徴となっています。

過去の古い図面を高速でスキャンしてデータ化できる、ZEUTSCHEL製の大型スキャナ「OS C1」(編集部撮影)

 今回、初開催となった建設DX展+では、AIによる業務支援が設計や積算といった業務にとどまらず、現場管理や測量、安全管理まで幅広い業務を担うフェーズへ進化していることが見てとれました。人手不足や技能継承といった建設業界の構造的課題を背景に、今後は個別ツールによる部分最適ではなく、BIMや3Dデータなどを基盤として各工程をつなぐプラットフォーム化による全体最適化がさらに進む兆しを感じた展示会でした。

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外部リンク

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