国内最大の無人航空機(空中ドローン)や水中ドローン関連の総合展示会である「Japan Drone(ジャパン・ドローン)2026」が、6月3日から6月5日にかけて、幕張メッセで開催されました。第11回目を迎えるイベントには、台風による開催内容の一部変更があったものの、会期中は2万人を超える来場者(主催者発表)が足を運び、会場はにぎわいました。
前年開催(関連記事:展示会レポート◎Japan Drone 2025)ではドローンポート(*1)などによる運用自動化、機体の大型化などが会場全体で目立ちましたが、ドローンの本格的な普及はこれからだけあって今年は前年と異なる様相を呈しました。 (*1)ドローンが発着する施設や機器のことで、遠隔での自動運用を実現するソリューション
Japan Drone 2026で最も印象的だったのは、ドローン産業が従来の「機体開発競争」から「社会実装競争」へと移行していること。会場では新型機体が並ぶ一方、運用支援ソフトウェアやシミュレーター、周辺機器といった実運用を支えるソリューションが目立ちました。加えて、経済安全保障を背景に“信頼”を担保する国産化への関心が高まっており、日本のドローン産業が新たな局面を迎えていることを感じさせる展示会となりました。
以下、「会場の全体感」「機体」「社会実装関連」――この三つの切り口から今回のJapan Drone 2026のポイントをレポートします。
海外依存からの脱却指向が顕在化
専門展示会では、主要プレーヤーが比較的大きなブースを毎年定位置に出展することが多く、これはJapan Drone 2026においても同様。GMOインターネットグループ(以下、GMO)やTERRA LABO(テラ・ラボ)、Blue innovationなどが前年と同じ場所にブースを構えていました。
出展者の顔ぶれが大きく変わらない中、今年の印象として、機体だけでなく社会実装につながるコンテンツが前面に出ていたことは前述したとおりです。


また、海外からはウクライナとベトナムが初出展しました。Japan Droneは民間向け展示会ですが、ドローン技術は軍事用途から発展してきたもの。社会情勢を背景にウクライナのリーディングテクノロジー企業であるGENERAL CHERRYがブースを構えていました。

一方、2025年10月に発足した低空経済同盟(LEAP:Low Altitude Economy Partnership/*2)に加盟するベトナム企業が参集し、ベトナムパビリオンとして初出展。FPTグループのFPT UAV、HTI UAS、Gremsy、Hypomotionの4社が製品やソリューションを通じて技術力をアピールしました。FPT UAVの担当者は、「ドローンは戦略的技術分野の主要部門であり注力事業である」と語っています。
(*2)ベトナムのドローン産業団体。同団体と日本の一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、次世代移動体産業発展に向けた覚書を締結


産業用ドローンに求められる新基準
今回、日本の産業用ドローン市場が転換点を迎えつつあることがうかがえる展示会でもありました。キーワードは「国産化」です。会場では、“メイド・イン・ジャパン”を掲げるブースがいくつも見られました。
近年、さまざまな技術領域で日本の遅れが指摘されており、ドローン市場もその一つです。これまで、日本は海外からドローンを「買う国」でした。しかし経済安全保障や調達リスク、情報漏えいリスクなどへの対策を背景に、産業用ドローンに求められる基準は大きく変わりつつあります。
この背景には経済安全保障の考え方が挙げられます。インフラ点検や災害対応など公共性の高い用途では、部品調達のサプライチェーンやデータ管理の透明性が重視されるようになりました。
それゆえ、ドローンは単に飛行性能だけで評価されるのではなく、「どこで開発され、どのような部品で構成されているか」といった信頼性が評価基準になりつつあります。その具現化が国産ドローンなのです。
国産ドローンといっても明確に定義されているわけではありません。日本のメーカーが国内で設計から開発、製造まで手掛けた製品を指すのが一般的で、特にドローンの頭脳とされる「飛行制御システム(フライトコントローラー)」などの基幹部品が信頼性の高い日本製であることが重要な基準とされています。
フライトコントローラーはオープンソースが主流であり、性能や脆弱性に加え、サポート面でも大きな課題を抱えています。このため、国産ドローンとして自立的な技術基盤の確立や情報保護の安全性担保などの側面から、フライトコントローラーの国産化が重要となっています。
従来、国産のフライトコントローラーは、上場企業であるACSL製がほぼ一択という状況でした。その開発は難しく、新たな参入にはハードルが高いことが背景にあります。とはいえ、徐々に国産製品を投入する日本企業は増えてきており、会場ではAutonomy Dynamicsが出展していました。同社は、2025年に設立されたばかりのベンチャー企業です。
国産ドローンが求められるなか、「幅広い分野の専門研究者が集まりフライトコントローラーを開発した。国産技術により社会の需要に応え、国土と産業を空から支えたい」(同社の舘良太代表取締役)と、技術的な強みをいかして取り組む姿勢を見せています。

また、国産ドローンとしてはLiberaware(リベラウェア)が、超狭小空間点検ドローン「IBIS2」を紹介していました。配管や下水道、天井裏といった人が入り込めない特殊な場所の点検に活用されています。独自用途と国産という特徴から引き合いが増えているとのことです。

新機種や既存モデルの注目機が勢ぞろい
ドローンを機体の性能視点だけで見た場合、年を追うごとにスペックは向上し、従来に比べて長く高く飛べるようになっています。今後も緩やかな性能アップは続くでしょうが、機体の進化そのものは一定以上のレベルに到達しています。従来の技術だけでは直面する壁を打ち破ることは難しく、各社はさまざまな試みを進めています。
ここでは、機体に焦点を当て、新モデルや新技術など会場で目を引いたドローンをピックアップして紹介していきましょう。
Hybrid Flyer/株式会社石川エナジーリサーチ
ドローンの動力源は充電式バッテリーが主流です。バッテリー技術は進化しており軽量化やエネルギー効率などは向上しているものの、やはり限界があります。そうした中、新たな駆動方式の開発が進んでいます。
その一つがエンジンを搭載したドローンです。とはいえ、一般的なエンジンでは振動が安定飛行の妨げとなるため実用化が難しいといわれています。これを解決する技術として注目されるのが、石川エナジーリサーチのエンジン式ハイブリッドドローンです。
同社は、特許を取得している無振動エンジンを搭載したマルチローター型ドローン「Hybrid Flyer」を2027年発売に向けて開発中です。振動が発生しないことで飛行が安定し、最大2時間(最大ペイロード時90分)の長時間航行を目指しており、産業用ドローンの大きな課題である飛行時間を大幅に延ばす可能性があります。
将来的には、無振動エンジンとモーターの出力を統合し、最大ペイロード50kgというスペックを持つ大型ドローン「Parallel Hybrid Flyer」の開発にも取り組んでいます。

AERION Grid/株式会社ロボデックス
長時間飛行を可能とする技術としては、エンジン以外に水素燃料電池が挙げられます。この分野で先行しているのが国内企業のロボデックスであり、ブースに展示されていたのは、東京電力ホールディングスと共同開発を進めている新型水素燃料電池ドローン「AERION Grid」のプロトタイプです。
自動車部品メーカーである日進製作所グループが開発したドローン専用の国産・水素燃料電池も紹介していました。
水素と酸素を化学反応させて電気を作り出す水素燃料電池は、反応時の発熱を利用することによる総合的なエネルギー効率の高さが特徴です。このため同じ容量でも、水素燃料電池は充電式バッテリーよりも長時間の飛行を可能とします。社会実装はこれからですが、実用化されれば長距離運用が求められる分野での活用が期待されます。

AS-VT02K/エアロセンス株式会社
ドローン市場で徐々に存在感が増しているのがVTOL型ドローンです。垂直に離着陸できる回転翼型ドローンと高速で長距離を飛べる固定翼型ドローンの特徴を併せ持つタイプです。
日本初のVTOL型ドローンといわれているのが、エアロセンスのエアロボウイング「AS-VT01」です。今年の展示会では、同モデルの後継機となる「AS-VT02K」を展示。「防水・防じん性能がアップ(IP43)したことで雨天時の運用に対応できるようになった。また、機体の可搬性も向上し、緊急時の機動力や現場での運用性が高まった」(ブース担当者)とのこと。国産VTOLとして、会場でも注目されていました。

A1/ANTIGRAVITY
個人的に興味を覚えたのが、360度全景ドローン「ANTIGRAVITY A1」です。ANTIGRAVITYは、360度カメラで世界トップシェアのInsta360の支援を受けたドローン愛好家とエンジニアによるプロジェクトとして誕生した新たなコンシューマー向けドローンブランドです。
360度撮影とVisionゴーグル&スティック型モーションコントローラーによる直感的操作が臨場感のある没入型映像体験を実現します。
全方位を撮影できるカメラを搭載したドローンは世界初とのこと。本体は249g未満で、8K解像度に対応しています。その用途は使う側に委ねられますが、新たな映像活用の可能性を秘めたモデルだと感じました。


社会実装を促すコンテンツも進化
ドローンの活用や普及は、機体だけが進化してもその勢いは増しません。操縦士の育成やソフトウェア開発、法整備といった運用環境も含めて充実させていく必要があります。今回の展示会では、そうした社会実装を促すためのコンテンツが数多く見られました。特に目を引いたものを紹介します。
操縦技術を向上させるシミュレーター
基本的にドローンを飛ばすには操縦技術が求められます。その技術向上に用いられるのが「シミュレーター」です。シミュレーターとは、現実世界の状況をコンピュータ上のデジタル空間で模倣するためのシステムのこと。物理的な訓練を仮想環境で行えるので、コストや時間、機体の破損リスクなどを最小化できることがメリットです。
ドローンにおいてもシミュレーターへの需要は高まっています。例えば、2022年12月の航空法改正でドローンに関する国家資格「無人航空機操縦者技能証明制度」が導入されました。この国家資格対策として、シミュレーターは利用されています。
また、ドローンは人が立ち入れない場所での活用に威力を発揮しますが、こうした過酷な場所では実地訓練が欠かせません。シミュレーターを用いることにより、実地訓練に伴うリスクの軽減につながるわけです。
展示会場で目を引いたシミュレーターが、GMOインターネットグループによる国家資格対策・実地訓練ドローンVRシミュレーター「GMOフィールドXR for ドローン」です。最も大きな特徴は、「VRによる没入感である」とブース担当者。「ドローンシミュレーターでVRを用いたものは見かけない。飛行ログの分析などデータ可視化によるスキルアップなど、操縦技術の向上を効率的に支援できる」と語っていました。
記者として注目したのは、実地訓練での用途です。橋やプラントの点検、火災現場などでは、実機を用いての訓練は難しい面があります。同社のシミュレーターは、こうした特殊環境をカスタマイズにより柔軟に再現できるとのことなので、その有用性に期待できそうです。

ドローンの運用を支えるロボティクス
ドローンの社会実装が進むほど、その運航管理や保守、資材搬送など周辺業務の効率化や自動化も課題となります。その解決策としてロボットの活用が注目され始めています。
例えば、昨年は水中ドローンなどの実機を展示していたGMOですが、今年は機体展示が皆無。社会実装を促すソリューションの紹介に徹しており、ブースの大部分を占めていたのがヒューマノイドロボットの展示です。

当初、「ヒューマノイドロボットとドローンがどう結びつくのか」という疑問が湧きました。このあたりを率直に担当者に質問したところ、「ドローンは単独で飛ぶものではなく、その運用には後方支援が欠かせない。そこにロボットの活用を考えていきたい」とのことでした。
なぜヒューマノイドロボットなのかといえば、「従来、ヒトが行ってきた作業を代替できるため、ロボットを導入する際に既存設備を改修する必要がないことが大きなメリット」(同前)となるからです。
GMO傘下のGMO AI&ロボティクス商事は、JALグループで空港のグランドハンドリング業務を担うJALグランドサービスと共同で、ヒューマノイドロボットを空港で活用する実証実験を、2026年5月からスタートさせています。
その流れから、展示会場ではヒューマノイドロボットによるグランドハンドリング業務のデモンストレーションを実施しました。デモンストレーションは、レバー操作によりロックを解除しコンテナを押して移動させるという一連の作業をヒューマノイドロボットが代替するもので、動作は緩やかながらスムーズな動きを披露しました。

ドローンの機能拡張
今や、ドローンは単なる空撮カメラではありません。さまざまなツールを機体に搭載して機能を拡張することにより、幅広い用途で使うことができます。会場では多様な周辺ツールが展示されるなか、来場者の関心を集めたのはDJI(日本代理店:SEKIDO)の提案でした。
最近、クマによる被害が相次いでいるなか、DJIのドローンに搭載したスプレー噴射装置から忌避剤を散布することで、クマなどの害獣を追い払うソリューションです。
機能拡張として用いられるのは、ドローン用スプレー缶噴射装置「SABOT-3」です。もともとは専用スプレー缶を装着して、補修や洗浄、マーキングといった業務に使うことを目的としたツールを、害獣用スプレーを外付けで搭載できるオプションと組み合わせることにより転用しました。
噴射距離は約6mとのこと。遠隔操作が可能なので、操縦者も機体も安全な場所からクマと対峙して撃退できます。ドローンの新たな用途開発として興味深いといえます。


Japan Drone 2026は、社会実装が加速する兆しを見てとれると共に、日本にとっての産業用ドローンビジネスが転換点を迎えていることが顕在化した展示会でした。
用途開発も大きく広がっており、従来は思いもよらなかった業務や環境での活用が進む可能性も皆無ではありません。DXを推進するための技術領域の一つとして、ドローンの動向を押さえておくことも必要ではないでしょうか。
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Japan Drone公式サイト
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