連載の第5回となる今回は、前回に引き続きCopilot in Windowsの有料版であるCopilot Proを使って、「中小企業×DX(以下、当サイト)」の新規連載企画案を作成していきます。
前回は、当サイトの読者のペルソナ(*1)を生成AIに考えてもらい、それを具体化するところまで解説しました。今回はその続きとして、「ペルソナが当サイトに訪れた理由」「彼らのニーズを満たすために、当サイトに足りない要素」「足りない要素を補うための新たな連載企画」というステップを踏んで、企画立案を進めていきます。
(*1)マーケティングにおいて、ターゲットとなる市場の人物像を最大限まで具体化したもの
※)本連載における検証環境のOSは、2024年9月時点での最新バージョンであるWindows 11 23H2を使用しています。なお、連載中にアップデートがあった場合は、適宜最新のバージョンに更新していきます。
プロンプトの思考プロセスに従い対話を進める
まず、前回の流れを簡単に見直しておきましょう。最初に生成AIに示したプロンプト(指示)は、以下の画面の通りです。前回はこの番号順に思考のプロセスを進めていき、②の「①で挙げた特徴を踏まえて、読者のペルソナを5人分考える」というところまで進みました。そこで考案されたペルソナは以下の通りです。
今回は、これに対して「次に進んでください」と指示するところからスタートしましょう。次の指示は、思考プロセスの3段階目となる「②で挙げた読者たちが、なぜ私のサイトを訪れたのか、その理由を1人1人に分けて書いてください」です。この指示に対するCopilot Proの回答を、以下に掲載します。
生成AIの回答には、「同業他社の成功事例や導入手順」「最新のテクノロジーやツールのレビュー」「具体的な経済効果やROI(*2)」といった情報が並んでいます。目新しさには欠けますが、間違った思考ではないといえるでしょう。ひとまず、この段階では生成AIの思考に介入する必要はないと考え、次に進むよう伝えました。
(*2)Return of Investmentの略で、投資収益率のこと。投資した資本に対して得られる利益の割合
思考プロセスの4段階となる「③で挙げた読者のニーズを満たすために、私のサイトに足りない要素を教えてください」に対する、生成AIの回答は以下の通りです。
ペルソナの業種や、サイトを訪れた理由といった、過去の情報に引っ張られている印象こそありますが、指摘されている内容としては間違っていないように感じられます。
必要に応じて生成AIの思考に介入
気掛かりな部分としては、「自動車部品製造業に特化した情報が少ない」といったような、かなり細かい分野に限定したコンテンツを求めている点です。どちらかといえば、現時点における当サイトの情報は中小企業全体に向けたものが多いことから、特定の業界に特化しすぎた記事はそぐわない可能性があります。ただし、今回は「次に進んでください」と指示しました。
「懸念点があるならば、修正させた方がいいのでは」という見方もあろうかと思います。それでも次に進めようとしたのには理由があります。仮に問題が起きたとしても、後戻りできるからです。
一度、このまま連載案を出させてみて、その内容に満足がいかなければ「④に戻ってもう一度、当サイトに足りない要素を考えてください。特定の業界に特化した記事を作る予定はないので、別の方向性で考えてください」などと、指示すればよいのです。
前回、思考のプロセスに番号を振っておくことにより、生成AIの思考に介入しやすくなると解説しましたが、この「後に戻る」というやり方は、まさに思考への介入にあたります。連載企画案を考えるプロセスにおいて、この後に残された指示は連載案の提示だけなので、とりあえず完走してしまおうと考えたわけです。
では、最終プロセスとして、⑤の「④で挙げた私のサイトに足りない要素を補う、新たな連載を始めたいと思います。連載の案を5つ考えてください」に進みましょう。
Copilot Proが導き出した連載企画案は下記の通りです。
どれも当サイトにとって必要な要素といえそうです。取材すべき業界の例も挙げられていますし、これらの案を具体化していくことにより、連載として十分に成立しそうです。もっともタイトルには工夫や捻りが欲しいところですが、この辺は人的に編集すべき点といえるでしょう。
ひとつの案を深掘りしながら具体化へ
ここまできたら、あとは内容を掘り下げていくだけです。とはいえ、5つの提案すべてを深掘りするには手間がかかります。こうした場合、最も興味を引いた案をひとつ選択してもよいでしょう。
今回は、生成AIの提案から1の「業界別DX成功事例」を選択し、以下の指示を与えて回答を得ました。
連載案には書かれていなかった業種が5つ提案されました。特に指示していなかったにも関わらず、提案の理由まで書いてくれたのは好印象です。その内容には、「DXによる品質管理や生産効率の向上」や「DXによる予約管理システムや顧客データの活用」といった具体的なものが含まれており、一定の説得力があります。
また、企業例として「中小企業」や「地域密着」といったワードが提示されていることから、規模感にも配慮していることが読み取れます。
さて、今回の連載案は取材を前提にしたものなので、取材時の質問項目案も生成AIに作成してもらうことにしましょう。以下が、そのためのプロンプトと回答の結果です。
質問の数は指定しませんでしたが、14個の案を作ってくれました。特に捻った質問はありませんが、記事には必要なものばかりです。このまま使えるとまではいかずとも、多少ブラッシュアップすれば実践に足る内容といえるでしょう。
新規事業企画など幅広く使える思考法
Copilot Proに新規連載案を考えてもらう企画は、ここまでとします。最後に書いておきたいのは、前回・今回で紹介した、“思考のプロセスを可視化する”という方法は、汎用性があるということです。メディアの連載企画案に限定されることなく、業種を問わずさまざまな企業の新規事業など、新たな企画を立案する時に活用することができます。
ただし用途によっては、与える情報量を増やすといった工夫は必要となります。今回は当サイトの新規連載企画であったため、与える情報はサイトのURLのみで事足りました。
しかし、企業や事業部の新規事業企画を考えさせるのであれば、会社の規模や業種だけでなく、現状の課題や強みといった詳細情報を伝えたいところです。なお、業界の大手企業などであれば、生成AIがその会社のことを事前に学習しているケースもあるので、「あなたは〇〇という会社を知っていますか?」と聞いてみてもよいでしょう。
プロンプトで思考プロセスを可視化するという方法を活用するには、慣れも必要です。いろいろと試行錯誤しながら習熟度を上げて、ぜひ自社のDXにいかしたいものです。
ここがポイント! |
●思考の順序を指定しておけば、後戻りが可能。 |
●ゴールが近づいたらとりあえず前に進み、生成AIの回答に不満があれば後戻りする。 |
●複数の案を提案させて、そのうちひとつを選んで深掘りを進める。 |
●思考のプロセスを可視化するプロンプトには汎用性がある。 |
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