デジタル変革(DX)を学ぶ

2024.10.11 15:30

連載◎Copilot in Windowsから始める“生成AI入門”/第4回
Copilot in Windowsを使ってみよう/テキスト編②

 連載の第3回では、Copilot in Windowsを使って、ウェブ上の記事の要約、返信メールの作成、「中小企業×DX(以下、当サイト)」の新規連載企画案を作成する様子を紹介しました。特に要約については、十分実用に足る精度を持っていることを感じていただけたかと思います。

 第4回では、新規連載企画案の作成に関して、より納得感のある成果物を得るために、段階を踏んだ指示を行っていきます。具体的には、まず当サイトの特徴を確認したうえで想定される読者のペルソナ(*1)のニーズを抽出し、それを満たすために必要なコンテンツとは何かを考えます。
(*1)マーケティングにおいて、ターゲットとなる市場の人物像を最大限まで具体化したもの

※)本連載における検証環境のOSは、2024年9月時点での最新バージョンであるWindows 11 23H2を使用しています。なお、連載中にアップデートがあった場合は、適宜最新のバージョンに更新していきます。

思考のプロセスを段階に分けて個々に回答を得る

 第3回で、Copilot in Windowsに当サイトの新規連載企画案を作成させた際のプロンプト(指示)は、非常に簡易的なものでした。その内容は、当サイトのURL以外の情報は特に与えず、「新しい連載のタイトルと内容を5つ提案せよ」というものです。その結果、Copilot in Windowsから、以下の回答が示されました(再掲)。

捻りはないが、当サイトのテーマに沿った企画が提案された。人が企画を考える際の参考にはなりそうだ。

 これだけでも、「多少は使えそうだ」という印象を受けるのではないでしょうか。とはいえ、この単純なプロンプトでは、「生成AIはどうやってこれらの企画を立てたのか」という思考のプロセスが明らかではありません。

 人が連載企画を考える際には、実際の読者像をイメージし、彼らのニーズを満たすにはどのような記事が必要か、といった段階を踏むことになります。思考のプロセスを正しく経ていれば、「なぜこの企画を立てたのか?」と聞かれた時にロジカルに答えられるため、だれもが納得できる新規企画の立案につながっていきます。

 そこで今回の連載では、「生成AIにも人と同じような思考の段階を踏んでもらおう」という試みを考えたわけです。

 生成AIを使って、手順を踏んだロジカルな企画案を捻出していくには、プロンプトの作り込みが必要になります。今回は、以下のプロンプトを用意しました。

思考のプロセスを5段階に分けたプロンプトを作成。ひとつの項目に回答したらそこで立ち止まり、私の「次に進んでください」の指示を待ってから、次の項目に進むよう指定した。

 見ていただければ分かる通り、ここで重要なのは、思考のプロセスに番号を振ってリスト化したことです。こうすることで、生成AIは人間と同じような思考プロセスを辿ることができますし、その内容も明確になります。

 さらに、項目ごとに順次回答させることで、生成AIの思考に介入しやすくなります。例えば、「こちらの意図しない回答が出てきた」、あるいは「生成AIが誤った認識をしている」といった場合でも、軌道修正が容易です。

 では早速、このプロンプトを打ち込んでCopilot in Windowsの反応を確認してみましょう。…といったところで、実は問題が発生しました。これまで使ってきたCopilot in Windows(無料)に、このプロンプトを打ち込んでも望ましい回答が得られなかったのです。

 本連載では「Copilot in Windowsから始める~」のタイトル通り、Windows 11搭載のCopilot in Windowsを使用してきました。しかし、無料版では前後の文脈を認識したうえでの回答が苦手なようです。具体的には、①と②の回答を同時に出してくる、「次に進んでください」と指示すると、今回のプロンプトとまったく関係のない話をし始める、といった具合です(※1)。

 そこで、新規連載企画の立案については有料のCopilot Proを用いて検証を進めていくことにしましょう。なお、Copilot Proの詳細については連載後半にて解説するので、そちらを参考にしてください。

(※1)編集部注:Microsoft Copilotには公開仕様がありません。このためCopilot in Windowsで採用されているAIエンジンのバージョン等は不明ですが、OSに最適化されたAIアシスト機能だけに、PC操作やPC標準搭載のアプリ周辺に関わる領域で使うには便利ですが、それ以上に活用しようとなると難しいというのが編集部環境下での感想です。

軌道修正をしながら思考プロセスを進める

 改めて、Copilot Proに前述したプロンプトを打ち込みました。すると指示通り、①の問いに対する回答が出てきました。
当サイトの特徴が箇条書きにされた。概ね正しいが、6は明確な誤りだ。会員機能はあるが、コメント機能はない。

 当サイトの特徴をほぼ正しく捉えていますが、一部には誤りが含まれています。そうなってしまった原因は、AIによるブラウジング(インターネット検索)の段階で、与えたURL以外のウェブサイトを閲覧したことのようです。出典元を示す「詳細情報」の欄には、関係のないサイトへのリンクが並んでいました。

 そこで、「ありがとうございます。しかし、6は違うのではないでしょうか。私のサイトにはコメント機能はありませんし、Q&Aもありませんよ。次に進む前に、もう一度書き直してください」と伝え、軌道修正を試みました。

 その結果、「6.読者とのインタラクティブなコミュニケーション」の項目が削除されたリストが再度提示されたので、それに対して「次に進んでください」と返しました。

 次の指示は、「①で挙げた特徴を踏まえ、読者のペルソナを5人分考えてください。ペルソナの情報は、可能な限り具体的に書いてください」というものです。

 ここでのポイントは、“具体的に”と指定することです。そうしないと、生成AIは抽象的な回答を頻繁に出してきます。必要な情報について、具体的な項目(年齢、職業、仕事の内容、悩みなど)を指示するのもおすすめです。さて、Copilot Proの返答を見てみましょう。

5人分のペルソナが提示された。情報の粒度はやや粗いが、方向性としてはそれほどズレていない。

 一人ひとりの名前や年齢、職業、背景や興味などが書かれたリストが出力されました。しかし、抽象的な情報も含まれています。そこで、「ありがとうございます。少し具体性が足りませんね。この人たちが勤めている会社の従業員数の情報を追加してください。また、業種についても単なる『製造業』や『小売業』ではなく、何を製造しているのか、何の小売なのかなど、具体的な情報を足してください」と指示しました。その結果、「修正版」として、以下の内容が得られました。

指示通り、従業員数の情報が追加された。業種についても、「自動車部品製造業」や「医療機器製造業」など、より細かくなった。

 このようにして、生成AIの思考を確認しながら人の手でアナログ的に軌道修正を行うことにより、最終的にほしい成果物に近づけていくことが可能となります。

 なお、ペルソナの数をもっと増やしたいなと思ったら、「さらに5人分のペルソナを考えてください」という追加指示も可能です。納得できるまで思考を突き詰めてから、次の段階に進みましょう。

 次回は今回の続きとして、「読者が当サイトを訪れた理由」「読者のニーズを満たすために、当サイトに足りない要素」「足りない要素を補うための新たな連載企画」の順番で、生成AIとの対話を進めていきます。最終的にどのような企画が生まれるのでしょうか。ぜひ、続けてお読みください。

ここがポイント!
●生成AIに企画を考えさせる場合、思考プロセスをリスト化して一つひとつ回答させる。
●一項目ずつ回答させ、間違いがある場合には人の手で軌道修正をする。
●回答の粒度を上げるため、具体的に書くよう指示をする。ほしい項目を指定するのもよい。
●Copilot in Windowsの無料版は、文脈を踏まえた回答が苦手なため、複雑な指示をする場合はCopilot Pro(有料)が必要。

外部リンク

・生成AIの思考に人が介入する方法
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