デジタル変革(DX)を学ぶ

2024.03.22 12:00

注目テクノロジー解説◎ノーコード&ローコード
アプリ開発の民主化を実現、プログラミング的思考は必要

スマートフォンのアプリケーションや企業の業務システムなどのソフトウェアは、今や日常生活や仕事に欠かせないものとなっています。これらを開発するには、コンピューターに対し命令や指示を行うためのプログラム、いわゆるソースコード(以下、コード)の記述が必要です。

 コード作成にはプログラム言語やプログラミングに関する専門知識を必要とするため、そのスキルを有するエンジニアがシステム開発を担いますが、当然ながら相応の開発期間やコストがかかります。

 しかし、デジタルシフトが加速する時代にあって、アプリケーションの開発にもスピード感が求められており、悠長に時間をかけているわけにはいきません。さらに予算面からコスト削減への要求も厳しくなっています。今や、ビジネスにおけるアプリケーションやサービス開発では、この相反する二つを同時に実現しなければならないわけです。

 そうした中、注目されている開発手法が「ノーコード」「ローコード」です。ノーコード&ローコードは、いずれもプログラミングに精通していなくとも、アプリケーションやサービスを開発することを可能とするもの。これまでプログラマーの専売特許ともいえたソフトウェア開発をだれでも行えるもの(民主化)とし、それこそ事業部単位でアプリケーションを開発して身近な課題を解決するといったことができるようになります。

ノーコード
ノーコード&ローコードはアプリケーション開発のハードルを下げるツール

 具体的には、ベンダーが提供する開発ツール(これは「プラットフォーム」とも呼ばれます)にあらかじめ用意されている標準のテンプレートやコンポーネントといった機能を、ドラッグ&ドロップで組み合わせて配置していくイメージ。GUI(Graphical User Interface)による直感的な操作で開発が可能なため、プログラミング初心者やその知識を持たない人でもアプリケーションを作れるわけです。

 専門のエンジニアがいなくても、業務アプリケーションの開発を可能とするノーコード・ローコードはデジタル・トランスフォーメーション(DX)を実現するツールの一つとして、さまざまな業界や業種で採用が広がっています。

ノーコードとローコードは何が違うのか

 前述したように、専門のエンジニアを必要とせずにアプリケーションやソフトウェアを開発できることがノーコード&ローコードの特徴ですが、両ツールには明確な違いがあります。最も大きな点は開発プロセスにおいてプログラミングを行うかどうかです。

 ノーコードは、開発プロセス全体を通じてプログラミングを行わないので、その知識やスキルがなくてもかまいません。プログラミングスキルがまったく不要という点がノーコードの最大のメリットといえ、プラットフォームの仕様の範囲内であれば機能を追加したり変更したりすることが可能です。裏返せば、あらかじめプラットフォームで用意されている機能以外は使えないため、開発の自由度が低いことがデメリットだといえます。

 こうした特徴から、ノーコードは部門や部署などで使われる小規模なソフトウェアや特定の業務用ソフトウェア、Webアプリケーションなどの開発に適しているといわれています。

 一方、ローコードはノーコード開発だけでは対応できない部分に対してプログラミングにより、プラットフォーム側で用意されていないテンプレートやコンポーネントの作成、機能追加などのカスタマイズが可能なことが特徴です。

 社内の他のアプリケーションとの連携も可能で、より開発の柔軟性や自由度が高いといえます。ある程度のプログラミングの知識は必要ですが、そこまで高度なスキルは求められません。社内の複数部門で使われるシステムなどの開発に適しているとされています。

 ただし、ノーコード開発と比較すると、一定のプログラミングスキルが必要という点でややハードルが高いともいえます。また、カスタマイズが可能といっても、プラットフォームの仕様を超えるレベルでの自由度はありません。

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 専門的なプログラミングスキルが不要とはいえ、だれもがすぐにノーコードやローコードを使ってアプリケーションやソフトウェアを開発できるというわけではありません。確かに、ノーコードはGUIによる直感的な開発を可能としますが、プログラミング的思考は求められます。

 プログラミング的思考とは、実現したい物事(動作など)における必要な順序や指示を理解して、意図した動作を最も効率的に具現化するために論理的に考えられる力のことです。

 ソースコードを記述できるプログラミングの知識はなくとも、プログラミング的な思考を身に付けることは必要でしょう。

 
ノーコード&ローコードの実用化はCMSが契機

 初めてノーコード&ローコードの概念が登場したのは、1982年に出版された英国の技術者ジェームズ・マーティン(James Martin)氏の著作「Application Development Without Programmers」であるとされています。

 その中で、将来的なIT人材不足に対応するためにも、コンピューターは一部であってもプログラミングを行わずに動くようにする必要があるといった趣旨の内容を説いたことがきっかけとされ、注目されるようになりました。

 これが具現化したのは、1995年に登場したCMS(Contents Management System)であるとされています。CMSはHTMLやCSS、JavaScriptなどの専門知識がなくても、簡単な操作でWebサイトを制作したりコンテンツを管理したりできるシステムのことです。WordPressなどはその代表的な例ですが、これもノーコード&ローコードの一種ということができるでしょう。

 そして、2011年ごろからローコード開発プラットフォームが市場に登場し、2014年に米国の調査・コンサルティング会社であるフォレスター・リサーチ社(Forrester Research, Inc.)が初めて「ローコード開発(low-code development)」という言葉を使用したとされています。

 以降、多くのノーコード&ローコード開発のプラットフォームが市場に登場して利用者が急拡大。モバイルアプリや業務効率改善のためのシステム構築など活用できる範囲が拡大し、今日に至っています。

プラットフォームは導入目的を明確にして選定

 ノーコード&ローコード開発のプラットフォームには、多くの国内外の製品があり、特徴や特性もさまざまです。開発の自由度が低いとされるノーコードにおいても、高い拡張性を備えたプラットフォーム製品が出てきました。

 例えば、AIの搭載などにより難易度の高い要件にも対応可能なケースが増えているなど、さらなる進化を遂げつつあります。

 しかし、ノーコード&ローコードで実装できる機能はプラットフォームに依存することとなります。このため、ツール選定にあたっては複数の社内のシステムを連携させたいなど、何を実現したいのかといった導入する目的を明確にして、その目的に合った製品かどうかを見極めることが重要です。

 また、拡張性や導入コスト、使い勝手なども大きな選定ポイントになります。部門内などで完結するような小規模なアプリケーションの開発であればノーコードでよいでしょうし、将来的に拡張性や既存システムとの連携などを視野に入れるならばローコードといった判断が必要でしょう。

 実際の開発にあたっては、プラットフォームの操作や機能内容などを理解しなければなりません。ユーザーインターフェイスの使い勝手も製品選定のポイントとなりそうです。同時にプログラミング的思考の習得など担当者のスキルアップやリスキリングは欠かせません。

 プラットフォームを導入しての活用に関連して、マニュアルの整備やサポート窓口なども重要です。日本のベンダーが提供するプラットフォームでは問題ないでしょうが、海外製品では英語版のマニュアルしかない、あるいはサポートとのやり取りは英語だけといったケースも少なくありません。導入後の体制も考えて選定したいところです。

 いずれにせよ、ノーコード&ローコード開発は、限られたリソースしか持たない中小企業にとってIT人材の不足を補う、あるいはデジタルシフトやDXを進めるツールとして有用であることは間違いありません。

 デジタルシフトやDXは現場の実態に精通した社内人材による取り組みが成功のポイントです。この点、プログラミングスキルのない、あるいは初心者でも業務アプリケーションを開発できることはノーコード&ローコードの魅力であり、同ツールを用いた開発にチャレンジする価値は大きいといえるでしょう。

 
ここがポイント!
●ノーコード&ローコードは、高度なプログラミングの知識やスキルがなくてもシステム構築が可能な開発手法。ただし、プログラミング的思考は必要。
●プログラミングのスキルが不要なノーコード開発に対し、ローコード開発ではプログラミングによるカスタマイズも可能。
●アプリケーション開発の期間短縮やコスト削減を実現し、事業部などによる開発は現場ニーズを反映しやすい。
●開発ツール(プラットフォーム)の選定では、導入目的や使い勝手、サポート体制などを吟味することが適切な製品を選ぶポイント。
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