デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の推進における中核的な要素といえば、間違いなくデータでしょう。膨大な情報量で構成されるビッグデータの分析を通じて、新たなビジネスの創出、業務の効率化や生産性アップなどが実現されます。
この意味で、DX時代にデータはビジネスシードであり、いかに膨大かつ多様なデータを収集し、利活用していくかが要の一つといえます。
実際、ビジネスや業務では、あらゆるシーンにおいてデータが収集され活用されています。例えば、工場内設備の稼働状況や物流倉庫の在庫管理、建設作業状況のリアルタイム監視・安全管理、物流・輸送業界での運搬車両の走行管理、さらには農場の土壌や作物管理に至るまで、現場から取得されたデータの統合的な管理・分析を通じて業務効率の改善やDX推進に役立てられています。
こうしたデータ社会の実現には多様なテクノロジーを必要としますが、その一つが無線通信技術です。その進化により、収集できるデータの領域や範囲は確実に広がりました。そこで、本稿では無線通信技術にフォーカスして解説していきましょう。
さまざまな規格が存在する無線通信技術
無線通信とは文字通り、物理的なケーブル(線)を使うことなく、電波(電磁波)や磁界などを用いて通信(データのやり取り)を行うこと。ワイヤーを使わないという意味でワイヤレス通信などとも呼ばれます。
ワイヤレス通信と聞いて、すぐに思いつくのは無線LAN(Wi-Fi)やモバイル通信、Bluetoothなど。これらが、パソコンやマウス、スマートフォン、ワイヤレスイヤホンといったデジタル機器の通信や接続に使われていることは周知の通りでしょう。
こうした馴染みの技術以外にも、NFC(Near Field Communication)、ZigBeeやThread、BWA(Broadband Wireless Access)、LPWA(Low Power Wide Area)といった多様な規格があります。各技術の業界団体が普及拡大を後押ししており、国際標準として承認されている規格も多く、用途やコスト、使い勝手などに応じて適切な技術が利用されています。
では、これら無線通信技術の違いは何でしょうか。それぞれにメリットやデメリットなどの特徴はありますが、データの伝送距離と通信速度・消費電力の視点から、大きく4つのタイプに分類が可能です(下図)。
近距離無線通信技術の通信距離は一般的に数センチから10メートル前後といわれますが、規格上(理論値)では数百メートルまで電波が届く技術も見られます。いずれにしても100メートル前後までの通信距離を持つ技術や規格が、このカテゴリーに含まれます。
さらに、近距離無線通信技術は用途などの違いから「無線LAN(Local Area Network)」と「無線PAN(Personal Area Network)」に分類されることもあります。無線LANはアクセスポイント経由でインターネット網や機器を接続することを基本としており、データ伝送も高速です。代表的な技術として、Wi-Fi規格が好例でしょう。
無線PANは、デジタル機器同士をダイレクトにつなぐことを想定したものであり、データ伝送の距離や速度は抑えられているものの、低消費電力であることなどが特徴です。代表的なテクノロジーには、Bluetoothなどが挙げられます。
一方、遠距離(中・長距離)無線通信技術では、理論的な通信距離は数百メートルから最大で数十キロメートルにも及びます。具体的な技術として、主にスマートフォンやモバイル端末のデータ通信に用いられている移動体通信、IoTの普及を背景に注目されているLPWAなどがあります。
| 「電波の性質」と「電波法」 無線技術により何らかのワイヤレス通信環境を実現する場合、さまざまな影響を想定して検討する必要があります。例えば、技術的には「電波の性質」であり、法規制関連では「電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)」などが挙げられます。 まず、理解しておくべきはその性質です。電波は、周波数が低いほど指向性(直進性)が弱く、周囲からの電波干渉を受けやすくなります。逆に周波数が高いほど指向性は高く、電波干渉を受けにくくなります。 ただし、指向性が強くなると、壁や建物などの障害物を避けて回り込むことができません。このため障害物に電波が吸収されてしまい、目的地まで電波が届きにくくなります。逆に、指向性が弱いと障害物に対して回り込みやすく、目的地まで電波が届きやすくなります。 また、周波数帯が高いほど、電波は空気中に存在する分子や雨などにエネルギーが吸収されやすくなります。これにより電波強度が低下するため、届く距離も短くなります。Wi-FiやBluetoothなどに使われている2.4GHz帯のように、利用者や接続台数が多くなると、混線や電波の相互干渉が起きやすく、通信品質に悪影響を及ぼしやすくなります。 こうした電波特性に加えて、法規制に従うことも求められます。そのベースとなる法律が「電波法」です。この法律では、公共の資源である電波を秩序に従い安全に利用できるようにするため、目的や用途に応じて周波数の割り当てを行い、その範囲内での使用を許可しています。同時に、免許制度や技術基準、周波数帯などに応じてさまざまな規制を設けています。 例えば、5 GHz帯で無線LANを利用する場合、通信ネットワークの構築にあたり、同じ周波数帯を利用している気象レーダーや航空機のレーダーに影響を与えないような機能を組み込む必要があります。 IoT向けとして2012年に割り当てられた920MHz帯での利用は、免許が不要ですが、電波干渉をできるだけ抑え、他の無線機器と共存できるようにするため、「累計の送信時間を1時間当たり360秒(6分)以内とする」などの制限が設けられています。 利用者は、こうした電波に関わる性質や規制に対応しながら無線通信技術を利用していくことが求められるのです。 |
以下、4つの分類に従い無線通信技術における代表的な規格について、それぞれの概要や特徴などを解説していきます。
近距離・高速無線通信技術
近距離伝送を前提とした無線通信技術で、高速通信が実現されている規格には「無線LAN(Wi-Fi)」や「UWB」などがあります。無線LANの実装ではほとんどがWi-Fi規格に準拠した機器が用いられていることから、本稿では無線LANとWi-Fiを同義として位置づけています。
無線LAN(Wi-Fi)
限定されたエリア内で無線通信ネットワークを構築する無線LANの最も代表的な規格が「Wi-Fi」です。Wi-Fiは、IEEE(米国電気電子学会/読み方:アイトリプルイー)が策定した「IEEE802.11」に基づく機器同士の相互接続性を認定するもので、1997年に最初の規格が策定されて以降、無線LANの実装規格として幅広く普及しています。
業界団体はWi-Fi Allianceです。もともとWi-Fiという呼称は、IEEE802.11規格の普及促進を目的としたブランド名であり、それが広まったことで無線LANといえばWi-Fiであるとの認識が一般化しました。
その登場以降、Wi-Fiは常に進化し新たな規格が策定されてきました。規格名はIEEE802.11の後に続く英字により示されます。本稿執筆時点で最も新しい規格は「IEEE802.11be」です。
しかし、この正式名称だけでは、その規格が新しいのか古いのかは知識がなければ理解できません。そこでWi-Fi Allianceは、第6世代となる「IEEE802.11ax」を策定した際に、規格の世代を「Wi-Fi 6」のようにナンバリング表記するようになりました。この呼称は、さかのぼって第4世代(Wi-Fi 4)から用いられています。
使用される周波数帯は2.4GHz帯と5GHz帯で、2021年からは6GHz帯も利用できるようになりました。Bluetoothや電子レンジなどでも利用されている2.4GHz帯は電波干渉を受けやすいですが、障害物があっても電波が届きやすく広いエリアをカバーしやすいのが特徴です。
5GHz帯は、使われている機器が多くないので電波干渉を受けにくく、無線機器が混在した環境でも通信が安定します。ただし、障害物の影響を受けやすいといったデメリットがあります。
Wi-Fi 6E以降の規格では、2.4GHz帯と5GHz帯に加えて6GHz帯を同時に使用できるようになりました。通信の遅延を減らす技術などの採用とあいまって、より大容量のデータ通信がスムーズに行えるようになっています。
Wi-Fiの通信距離は屋内で50~100m、屋外では500m程度とされていますが、オフィスや施設には壁や設備、機器類などの障害物があり、利用台数も多いことから、実際の有効距離は数分の一程度に留まります。
通信速度は、「bps(bit per second/1秒間に送受信できるデータ量)」で表記されます。現在の主流であるWi-Fi 6で最大9.6Gbps、最新規格Wi-Fi 7では最大46Gbpsまで引き上げられました。
UWB(Ultra-Wide Band)
超広帯域を利用し、高速ながら電力消費が比較的低い無線通信技術が「UWB」です。もともと米国で軍事用レーダーとして研究されていましたが、2002年の米国連邦通信委員会(FCC)の認可を経て民生用途での展開が始まりました。
FCCが割り当てた米国でのUWBの周波数は3.1GHz~10.6GHz。通信速度は数百Mbps、通信距離は30m程度、周波数帯域幅は7500MHzと非常に広くなっており、相互干渉の影響を受けにくいことが利点です。
測距の精度(誤差)が数十cm~1mと高精度な位置検出が可能なことも特徴で、非破壊検査や気象レーダー、地中探査レーダーをはじめ、応用範囲もさまざまです。2019年にはスマートフォンの「iPhone 11」にも搭載され、端末同士の位置を従来よりも高い精度で推定できるようになりました。スマートウォッチや紛失防止タグにも採用されています。
利用場所が屋内に制限されていた日本においても、2019年に7.25GHz~9GHz帯に限定して屋外利用が可能となりました。紛失防止のようなリアルタイム位置測位システムや無線センサーネットワーク、キャッシュレス決済、スマートキーなどへの応用が一段と進むものと期待されています。
とはいえ、UWBの標準規格化には課題もあるようです。当初、最大10mの通信距離で最大通信速度480Mbpsが実現可能とされ、2003年にIEEE802.15.3aとして規格化に向けた詳細の検討が進められました。しかし、OFDM(*1)を拡張した変調方式のMB-OFDM(Multi Band OFDM)を推す業界団体「Multi-Band OFDM Alliance(*2)」と、周波数拡散方式(*3)の一つであるDS(直接拡散)方式を推す団体「UWB Forum」が業界標準を目指して激しく競合。結果的に標準化は成立しませんでした。
(*1)Orthogonal Frequency Division Multiplexing/直交周波数分割多重/Wi-Fiでも使われている変調方式で、周波数利用効率が高く高速通信に向く
(*2)後に無線PANの業界団体であるWiMedia Allianceと合併
(*3)通信中に広範囲にわたって頻繁に周波数が変化する方式で、電波妨害や干渉、盗聴などに強い
こうした背景もあり、UWBはコンピューター向けのワイヤレス接続を実現する技術として注目されましたが、なかなか対応製品が登場せず期待外れに終わったことで、その地位をBluetoothに譲ることとなりました。
以降、2007年に低速のUWB無線通信技術がIEEE802.15.4aとして国際標準規格となり、2020年にはセキュリティ関連を強化したIEEE802.15.4zが標準化され、現在に至っています。
近距離・低速無線通信技術
近距離無線通信技術の多くは無線PANに属し、省電力を大きな特徴としています。さまざまな規格があり、デジタル機器間をワイヤレスで接続する規格として広く普及している「Bluetooth」や、交通系ICカードなどで使われている「NFC」、次世代のスマートホーム分野などで注目される「Thread」などが挙げられます。
Bluetooth
2.4GHz帯を利用し低消費電力な近距離無線通信技術である「Bluetooth」はパソコンの周辺機器、スマートフォンやスマートウォッチ、ワイヤレスイヤホンなどさまざまな機器の接続インターフェイスとして利用されており、Wi-Fiと並んで身近で有名な規格といえるでしょう。
1998年にスウェーデンの通信機器メーカーEricssonや米国のIBM、Intelなど5社がBluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)を設立し、1999年に最初の仕様を発表したことに端を発します。
通信速度は1Mbps~3Mbps(拡張モードのHigh Speed機能を組み合わせた場合は最大24Mbps)。規格更新を通じて機能拡張が図られており、2016年のBluetooth Ver.5.0では通信距離が最大100mまで延伸されました。さらに2024年に登場したBluetooth 6.0では、機器同士の位置検出の精度が大幅に高められています。
規格の仕様を知るうえで、押さえておきたい知識が「電波強度(Class)」や省電力版「Bluetooth Low Energy(LE)」です。
Bluetoothでは、電波強度(送信出力)が3つに区分されており、「Class 1」「Class 2」「Class 3」の規定があります。例えば、Class 1は「最大出力:100mW/最大通信距離約:100m/想定接続機器:高出力のヘッドホンやマイク、スピーカーなど」、Class 2は「最大出力2.5mW/最大通信距離:約10m/想定接続機器:スマートフォンやワイヤレスイヤホンなど」となっています。
2009年に発表されたVer.4.0からは、従来よりも大幅に省電力化を図った通信モードとなるBluetooth LEが追加されました。現在、Bluetooth LEの通信速度は125kbps~2Mbpsの4種類で、通信距離は2Mbpsが100m、125kbpsが400mです。
デジタル機器などに広く採用されているBluetoothですが、課題は使用帯域が2.4GHz帯であることです。Wi-Fiの項で解説した通り、採用機器が多い同周波数帯域では相互干渉による通信遅延や不安定な接続状態となることがあります。この解決に向け、より低遅延化・低消費電力化を進めると共に、Bluetooth LEの通信速度を現在の最大2Mbpsから最大8Mbpsへ引き上げること、将来的には5GHz帯や6GHz帯に対応することなどが検討されています。
| 赤外線通信 Bluetoothに類似した近距離無線通信技術として、電波ではなく、波長700nm以上の赤外領域の光(電磁波)を利用する赤外線通信があります。 赤外線通信のうち、情報通信機器向けの赤外線による光無線データ通信は業界団体Infrared Data Association(IrDA)が規格化しており、BluetoothやWi-Fiが普及する以前はノートパソコンや携帯電話、携帯情報端末(PDA)の近距離無線通信に多く使われていました。 赤外線通信は、低消費電力で干渉の影響は小さいものの、直進性が強く障害物に弱い(受信できない)ため、数cmから1m程度と短距離での利用が多くなっています。現在も、家電用リモコンや産業用のセンサー(スイッチ類)、ロボットといった短距離通信などに使われています。 |
ZigBee
「ZigBee」は、IEEE802.15.4規格をベースとしたセンサーネットワークや機器の制御向けに開発された、使用周波数2.4GHz帯の近距離無線通信です。その名称は、機器同士がネットワークに接続されて相互通信する仕組みが、ミツバチがジグザグに動いて蜜のある場所を情報交換するイメージと重なることに由来するといわれています。2004年に、同規格の推進団体であるConnectivity Standards Alliance(旧ZigBee Alliance)によって策定されました。
その特徴は、無線PANの中でも低速な規格ですが、突出した低消費電力化が図られていること。具体的には、伝送速度250kbps程度/消費電力60mW以下となっています。例えば、同じ2.4 GHz 帯を使用するBluetoothと比較してみると、伝送速度で4分の1、消費電力で半分程度という仕様です。
機器側も必要な時だけ起動(不要時にはすぐにスリープ状態に移行)する仕様となっており、1個の電池で数年単位での駆動も可能となっています。
構築できるネットワーク方式は基本的なスター型やツリー型に加え、メッシュ型に対応していることも特徴です。メッシュ型ネットワークにより途切れにくい安定した通信品質を実現できます(ただし、省電力化は困難に)。
また、1つのネットワークで接続できる機器の台数は約6万5000台と、近距離無線通信規格(Bluetooth:最大7台/Wi-Fi:最大32台)の中でも膨大な接続数です。
こうした特徴から、規格化された2000年代以降、ホームオートメーションやIoTシステム、スマートホームやビル管理といった数多くの機器を低消費電力で接続したい分野で利用されています。
Thread
「Thread」は、米Google傘下のNest Labsが開発したもので、IoT向けにインターネットの標準通信技術であるIPv6(Internet Protocol Ver.6)をネイティブにサポートする、メッシュ型ネットワークを採用した低消費電力の近距離無線通信技術です。無線PAN向けのIEEE802.15.4規格に基づくため、ZigBeeと基本仕様は似ています。
ただし、Threadはルーター不要で既存のIPv6ベースのWi-Fiネットワーへダイレクトに接続でき、インターネットのIP通信網をそのまま無線通信に使用できます。この点、ルーターを介して接続する必要のあるZigBeeとの違いです。
通信速度は250kbps、伝送距離は30m~100m。電池駆動のIoT機器向けに最適化された設計により、ZigBeeよりも消費電力を低く抑えられることも特徴です。2014年に対応機器の接続を認証する業界団体であるThread Groupが設立され、同技術の普及拡大を推進しています。
期待度は高く、2022年に策定されたスマートホームを実現するための標準規格であるMatter(マター)に、BluetoothやWi-Fiなどと共にThreadも採用されています。
Matterには米国の大手IT企業であるAmazonやApple、Google、韓国のSamsung Electronicsなどが参画しており、対応機器の充実に伴い、Threadの存在感が高まっていく可能性もあります。
NFC(Near Field Communication)
13.56MHz帯を利用した「NFC」は、電子マネーや交通系ICカードに用いられているデータ伝送距離10cm程度の近距離無線通信技術です。同技術を搭載したスマートフォンやカードリーダーなどに、非接触型のICカードや電子タグなどを近づけることにより、双方向でデータ通信を行えることが大きな特徴となっています。
NFCは、ソニーグループとオランダのNXP Semiconductorsが共同開発した技術であり、2004年に発足した業界団体のNFCフォーラムが普及拡大を推進しています。
現在、NFCには、非接触ICカードの国際標準規格ISO/IEC14443のType-A/Bに準拠した「NFC-A」と「NFC-B」、ISO/IEC18092に基づく「NFC-F(FeliCa)」、ISO/IEC15693準拠の特定用途(主に物流のRFIDタグ)向け「NFC-V」という4種類の規格が存在しています。
NFC-A/NFC-Bは、最大424kbpsの通信速度で、海外でのクレジットカードやスマートフォンの決済、電子チケットなどの用途で使われています。
NFC-Fは日本国内での利用を前提に設計された規格であり、FeliCa(フェリカ)と呼ばれ、交通機関の自動改札や電子マネー、IDカードなどのアプリケーションで使われています。通信速度でNFC-A/NFC-Bの2倍となる最大847kbpsが実現されており、混雑する駅の改札をスムーズに通過できるのもこうした仕様となっていることが理由です。
遠距離・高速無線通信技術
広いエリアを移動する端末や機器との通信を前提に、遠距離への高速データ伝送を実現するテクノロジーが遠距離・高速無線通信技術です。最も代表的なものは「移動体通信」であり、「BWA」といった規格もあります。
移動体通信
「移動体通信」は、モバイル通信やモバイルコミュニケーションなどとも呼ばれ、基地局の通信エリアを越えて広い範囲を移動して通信を行える技術のことです。Wi-Fiやコードレス電話、固定無線アクセス(FWA)といったエリアが切り替わらないものは含まれず、一般的には携帯電話やPCなどの端末によるデータ通信など、事業者が提供する通信サービスをいいます。(*4)
(*4)広い意味では、警察やタクシー等の業務用無線、トランシーバー等の特定小電力無線なども含まれる
国内における移動体通信の端緒は、当時の日本電信電話公社(現NTT)が提供した公衆無線サービス「ポケットベル」といわれていますが、本格的には1979年に登場した自動車電話であり、ここから第1世代(1G)として移動体通信の歴史がスタートしました。
以降、世代を経るごとに新たな技術が盛り込まれ進化し、現在は第4世代(4G)から第5世代(5G)への移行期にあり、5Gの普及が進んでいます(表2)。
なお、4Gは4G LTEと表記されることもあります。LTEとはLong Term Evolutionの略称で、日本語では「長期的進化」を意味します。3Gから4Gへ移行するプロセスにおいて4Gの前段階規格として3.9Gが開発され、この規格をLTEと呼んでいました。
つまり、「3G」から「LTE(3.9G)」、「4G」へと進んだわけですが、LTEは4G規格に紐づいた技術として開発されたこともあり、当初は4G LTEや4G/LTEと表記されました。これらの表記はその名残であり、厳密には4GとLTEは異なり、今は第4世代を4Gとするのが一般的です。
普及の進んでいる5Gの主要な特徴は、「高速」「大容量」「超低遅延」「同時多数接続」です。例えば、4Gの通信速度が下り(基地局から端末方向):最大1Gbps/上り:最大480Mbpsであるのに対し、5Gでは下り:最大20Gbps/上り:最大10Gbpsと大幅な高速化が図られました。遅延速度も4Gの50ms程度に対して、5Gでは1ms程度となっています。
これらの通信速度や遅延速度は理論値ではありますが、ロボットの遠隔操作や自動運転制御などリアルタイム性が重視される用途でも活用が可能でしょう。
DXの観点では、通信事業者ではない企業や自治体が工場や建物の内部、あるいは過疎地域などの特定エリアで5Gを活用できる「ローカル5G」が注目されています。
利用したい企業や自治体は無線局の免許を取得することで、特定のエリアにおいて独自の5Gネットワークを構築し運用できるようになります。その導入には知識が必要でコストもかかりますが、公共のパブリック5Gで発生した障害や回線混雑などの影響を受けず、外部とは遮断されているのでセキュリティを担保できることなどがメリットといえます。
ローカル5Gは、特に製造業での注目度が高く、自社工場の敷地内にネットワークを構築してロボットを用いた自動運転や遠隔制御によるスマートファクトリー化を実現する技術として考えられています。
また、ローカル5Gと比較されるのが「プライベート5G」です。企業や自治体などが特定エリアで専用の5Gネットワークを構築するという点では双方とも同じですが、プライベート5Gでは通信事業者がパブリックネットワークを用いて利用者向けの専用ネットワークを構築するという点で異なります。
企業や自治体は事業者が提供する5Gネットワークを専用サービスとして利用できるため、免許を取得する必要がなく、保守・運用の負担も通信事業者が担います。
2020年に提供が始まった5Gですが、すでに後継規格となる第6世代(6G)通信の開発が進んでいます。第5世代の次に来る規格であることから、「Beyond 5G」とも呼ばれます。
文字通り、5Gを超える高速・大容量通信や消費電力・コストの低減などが追及されると共に、現在の規格では通信できないエリア、例えば海や空、宇宙といった場所へと通信可能な範囲の拡張などが見据えられています。開発中のため詳細は明らかになっていませんが、2030年のサービス提供開始を目指してプロジェクトは進められています。
BWA(Broadband Wireless Access)
2.5GHz帯などを利用する「BWA」は、日本語では広帯域移動無線アクセスといい、ワイヤレスでのインターネット接続を実現するブロードバンド無線アクセス規格です。光回線が敷設されていない場所やエリアでも高速インターネット回線を使えるようにする技術で、大学のキャンパスや工場といった広い敷地を持つ施設などで利用されています。
BWAには、「全国BWA」と「地域BWA」があります。いずれも免許の取得を必要とし、両方に登録することはできません。このため、全国BWAは全国規模で提供されているサービスで、基本的に担い手は通信事業者となっています。
地域BWAは、同技術を地域の公共サービスの向上や地域的なデジタルインフラ格差税制を目的に、管轄する総務省により実施されているもの。多くは地域のケーブルテレビ局などが事業者となって、災害時の連絡用や山間地における通信環境の整備などに利用されています。DX視点で見た場合、地域BWAをビジネスに活用できそうです。
移動体通信の世代に応じてBWAは進化しており、LTEや4Gベースの無線方式を利用でき、さらに5Gへの移行も進んでいます。
遠距離・低速無線通信技術
デジタルシフトやDXの推進において、普及が進むテクノロジーの一つがIoTです。さまざまなモノがインターネットにつながり、センサーを介して現場の情報を収集し、集めたデータを業務効率化や生産性アップ、新たなビジネスの創出に活用するためのデジタル基盤です。
IoTインフラでは、膨大なセンサーを常時接続してデータを収集するため、通信回線には速度よりも低消費電力でデータを長距離伝送できるといった要件が求められます。
こうした要件に適しているのが遠距離・低速無線通信であり、その代表的な技術がLPWAです。同技術はLow Power Wide Areaの略称ですが、その名の通り省電力で広いエリアにおいて通信が可能です。データの伝送や容量は限られますが、「広域・遠距離」で「低速・低消費電力」、かつ「低コスト」という特徴はIoTシステムにぴったりというわけです。
LPWAには多様な技術や規格が存在します。それぞれに特徴があり、用いられる用途もIoTをはじめとしてさまざま。詳細は、『注目テクノロジー解説◎IoT時代の無線技術「LPWA」』にて解説しています。
| ここがポイント! |
| ●無線通信技術の種類は、大きく「近距離・高速無線通信」「近距離・低速無線通信」「遠距離・高速無線通信」「遠距離・低速無線通信」に分類できる。 |
| ●近距離・高速通信の代表的な規格には「無線LAN(Wi-Fi)」と「UWB」が挙げられる。 |
| ●「Bluetooth」や「Thread」、「NFC」などの近距離・低速無線通信は、幅広い用途での活用が期待される。 |
| ●遠距離・高速通信の代表的技術「移動体通信」では、ローカル5Gやプライベート5GがDX推進の仕組みとして注目される。 |
| ●IoTの広まりと共に導入が進んでいる「LPWA」は、遠距離・低速無線通信の代表的な技術である。 |
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