デジタル変革(DX)を学ぶ

2023.11.30 18:00

セミナーレポート◎Dospara plus Synapse 2023
AIをキーワードに最新技術やトレンドを紹介

 2023年10月6日、株式会社サードウェーブ主催、週刊BCN共催による「Dospara plus Synapse 2023~AIを知り、AIを活用する、AIテクノロジー新時代がビジネスを変える~」と題したセミナーと展示会が、都内のベルサール秋葉原にて開催されました。

Dosparaplus Synapse 2023はセミナーがメイン。次々と登壇する講演者により最新AIの動向が語られた

 アドビ株式会社、インテル株式会社、エヌビディア合同会社、日本マイクロソフト株式会社の協力の下、セミナーではAI(人工知能)をテーマにビジネスでの活用シーンやデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進、将来展望などについて、IT/AI関連のトップベンダーらが一堂に会して講演が行われました。

 AI開発や導入に向けた最新技術やAIシステム、それを実現する高性能なCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)/GPU(Graphics Processing Unit:画像演算処理装置)、ワークステーションなど、先端技術やトレンド、活用事例が紹介され、オンライン視聴を含めて多数の参加者が聴講し、隣接の展示会を含めて活気に満ちたイベントとなりました。

午前から午後遅くまで開催されたセミナーの各プログラムでは多数の参加者が登壇者の話に熱心に耳を傾けた

 以下では、多数のセミナープログラムから興味を引いたテーマや講演のポイントをピックアップし、その概要などを紹介していきましょう。

2つの方向で拡大するAI市場に追従

 最初に登壇しセミナーのオープニングを飾ったのは、主催したサードウェーブの尾崎健介代表取締役社長兼最高執行責任者と井田晶也取締役兼上席執行役副社長。「今後のクライアントコンピューティング事業の展望」について語りました。

 同社はここ5年ほど、老舗パソコンショップ「ドスパラ」やそのビジネスブランド「ドスパラプラス」の運営による小売業から、最新鋭のCPUなどを搭載した高性能なパソコンなどをBTO(Build To Order:受注生産)で製造・販売する製造業へ、さらにeスポーツ事業を含めた総合的なサービス業へと事業を拡大するとともに、コンシューマー向けから法人向けの企業への転換と、この2点に重点を置いて事業を展開してきました。尾崎社長はそうした経緯を語ると共に、2024年の設立40周年を前に今年8月、法人事業を井田副社長が統括する体制に切り替えたことに言及しました。

サードウェーブの尾崎健介代表取締役社長兼最高執行責任者

 今後のAI市場について、尾崎社長は「大量に学習させたAIを皆がクラウドで使う方向と、各企業特有の情報をもとに各社のサーバー/ワークステーションで学習させていく方向、この2つの方向で急速に拡大していくと予測されます。当社もそれぞれの領域を強化し、AI向けのサーバー/ワークステーション、クラウドサービスに注力していきたい」としました。

 井田副社長は同社のビジョン “100年先も世の中に求められる会社であるために”に基づき、「次の100年先に向けて、AIを使って当社の“人々の創造活動の可能性を最大限にする”というミッションを遂行していきたい」と語り、今後は法人向けでさらに飛躍していくと強調しました。

 それに伴って製品ブランドを「Galleria(ガレリア)」「raytrek(レイトレック)」「THIRDWAVE(サードウェーブ)」の3つに集約してユーザーへの製品訴求力を強化すると共に、クリエーターやデザイナーPCなど幅広く対応していたraytrekブランドは法人向けに特化していくとのことです。

ビジョンとミッションについて語る井田晶也取締役兼上席執行役副社長

 また、同社法人事業統括本部の高橋良介上席執行役員は、サードウェーブグループの生産・物流機能の中枢を担う綾瀬本社工場(神奈川県綾瀬市)におけるAI活用事例の他、セミナー開催日から販売を開始した高性能ワークステーションの新製品「raytrek Workstation X4630」を紹介。

 これまでのデュアルCPU構成や高い拡張性といった特徴を継承しながら、CPUには「第4世代インテルXeonスケーラブルプロセッサー」を2基搭載するなど最新技術を実装することで、 “オフィスに置ける”冷却性と静音性の両立を図ったと、その特徴について説明しました。

すでに時代はDXからAIデファクトへ

 次に登壇した一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA/松尾豊理事長:東京大学大学院工学系研究科教授)の岡田隆太朗専務理事は「AIの進化-テクノロジーがもたらす社会への変革」をテーマに、AI/ディープラーニング(深層学習)の動向について説明しました。中でも興味を引いたのは、「デジタライゼーションからDX、さらにAIデファクト(AI Transformation)の時代へと突入しようとしているのではないか」との指摘。中小企業もまた、こうしたスピーディーに変化する技術トレンドにキャッチアップしていかないと、競争から脱落し、取り残されてしまうのではないかと感じました。

 そうした時代にあって、AI/ディープラーニングの活用はすべてのビジネスパーソンの必携リテラシーになりつつあるとし、同協会ではAI/ディープラーニングを活用できる人材の育成に向けたオンライン講座である「AI for Everyone」や、その活用リテラシーの向上を図るための検定、AIプロジェクトの開発・推進に向けたエンジニア資格などを中心とした、さまざまな活動に取り組んでいるそうです。

一般社団法人日本ディープラーニング協会ではセミナーに向け膨大な資料を用意。講演では、その中から特に重要なものが提示された

 「建築業界における最新テクノロジー活用事例-xR、AI-」のテーマで講演したのは、建築総合アウトソーシング事業を手掛ける株式会社M&F technicaの守屋正規代表取締役です。

 熟練技術者が図面を見ながら判断する場面が多い建築業界のデジタル変革を目指し、建物を構成する各建材のデータベースとなるBIM(Building Information Modeling)の特徴や、AI/VRと組み合わせたBIMデータの活用事例を紹介。BIMの活用により、さまざまなシミュレーションを効率化できるので、設計から施工まで生産性向上策の水平展開が可能になるとしました。

 また、株式会社フューチャースタンダードの鳥海哲史代表取締役は「映像解析AIから生成AIまでオンプレ実行基盤SCORERの紹介」の題でその特徴などを紹介しました。

 同社が手掛けるSCORER(スコアラー)は、映像解析AIを活用したAIシステム開発プラットフォームで、ユーザーがさまざまな画像・映像解析システムを開発するうえで、SCORERプラットフォームの活用により事前の技術検証プロセスが不要になり、その次の段階であるビジネス検証からプロジェクトを進められることから、早期に安価なシステム開発が可能となることを強調しました。

GPU/CPUもAIに対応

 グラフィックス分野の半導体市場をけん引するエヌビディアからは、エンタープライズ事業本部の高橋想プロフェッショナルビジュアライゼーションビジネスデベロップメントマネージャーが、仮想空間上のオープン開発プラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を用いたAI活用事例を中心に、AIとグラフィックスを組み合わせた各社の取り組みなどを紹介しました。

 NVIDIA Omniverseは産業メタバースの開発プラットフォームで、仮想空間上で3次元デザインモデルをリアルタイムに共有・閲覧・編集でき、シームレスな共同作業とパフォーマンス強化が可能としています。

 同社のブログでは、8月に米国Los Angelesで開かれた世界最大のコンピュータグラフィックスの国際カンファレンス「SIGGRAPH(シーグラフ)2023」での発表内容を総括しています。

 講演ではその中でジェンスン・ファンCEOが基調講演で述べた“AIにはグラフィックスが必要であり、グラフィックスにはAIが必要”という言葉や、最新の研究成果やデモを多数発表したことも紹介しました。

 また、生成AIが産業全体のワークフローを変革していることを指摘。Omniverseでの生成AIの連携・活用では、Amazon Roboticsの自律走行ロボットの機能改善や台湾の大手エレクトロニクスメーカーPegatronの製造ラインにおける検査の自動化などの事例を取り上げました。

 半導体チップでは、AIとグラフィックスを多用するワークフロー向けGPU「NVIDIA RTX」シリーズに関して、独自の「NVIDIA Ada Lovelace」アーキテクチャによる高性能デスクストップGPUファミリや最高性能の「RTX6000 Ada世代」などにも言及しました。

 一方、インテルの講演テーマは「インテルXeonプロセッサーの最新技術とCPU×最新AI技術」。同社技術本部プラットフォーム・アプリケーション・エンジニアの矢内洋祐氏が登壇し、AI/ML(Machine Learning:機械学習)ソリューション導入の最大の課題はコストであるとし、低コスト化に向けては①AI人材不足の解消、②AI開発プロセスの短縮化、③AIシステムTCO(トータル的な所有コスト)の削減が必要と指摘しました。

 そして、矢内氏はこれらへの同社の取り組みを紹介する中で、特に③の総所有コストの削減に寄与するのがAI処理に対応したインテルのXeonスケーラブルプロセッサーであると述べています。

インテルの技術本部プラットフォーム・アプリケーション・エンジニア矢内洋祐氏

 Xeonスケーラブルプロセッサーでは、2023年1月に「第4世代インテルXeonスケーラブルプロセッサー」(開発コード名「Sapphire Rapids」)を発表。6つのエンジンを搭載しており、中でも新たな拡張命令「インテルAMX(Advanced Matrix Extensions)」は同CPUの各コアに内蔵されたディープラーニングアクセラレータで、従来と比べて大幅な性能向上が実現されました。

 “データ準備~モデル学習~デプロイ(統合・展開)/モデル推論”という一連のAI開発プロセスではモデル学習にGPU、それ以外のプロセスはCPUが活躍しているとしつつ、第4世代Xeonにより「簡単なモデルであれば、CPUを用いてモデル学習でも活用できます。AI開発プロセスをすべてXeonスケーラブルプロセッサー上で行うことが可能であり、その要となるのがインテルAMX。コアの中のアクセラレータで計算させるので、電力効率も非常によくなります」と矢内氏。Xeonスケーラブルプロセッサーを含むハードウェア/ソフトウェアの両軸からエンドtoエンドのAI開発・運用を支えるとしました。

AIは人間を手助けする技術

 日本マイクロソフトは「時代が変わる。働き方が変わる。Windows 11とAIが実現する世界」とのプログラムテーマを掲げ、デバイスパートナー事業本部マーケティング戦略本部の仲西和彦Commercial Windows戦略部長が講演に立ちました。

 同社が展開するAI技術としてMicrosoft 365の各アプリに対応した「Microsoft 365 Copilot」、9月に発表したWindows 11の新機能となる「Copilot in Windows」を紹介しました。

日本マイクロソフトから登壇したデバイスパートナー事業本部マーケティング戦略本部の仲西和彦Commercial Windows戦略部長

 「当社はAIを、あくまでも人間を手助けする技術と位置付けており、“Copilot(副操縦士の意味)”というネーミングはまさにそのことを示しています。AIは人間に指示したり人間の作業を決めたりするのではなく、みなさんの仕事をより効率的に行うため、あたかもアシスタントがつくようなイメージで仕事を効率的にサポートすること。それをCopilotと位置付けています」(仲西部長)。

 これらにより全く新しい働き方と今までにない高い生産性を実現でき、Windows11でAIはパソコンの技術革新にとどまらず、働き方の再考につながるなどとしました。

 この他、セミナーでは早稲田大学基幹理工学部情報通信学科の渡辺裕教授(テーマ:映像認識から生成系AIに至る研究の変遷と計算機環境の変化)やアドビ(テーマ:想像性を解き放つアドビFirefly)などが登壇。株式会社playknot(テーマ:XR/メタバースの新規事業計画について)の講演をもって、長時間に渡るセミナーは締めくくられました。

 
セミナー登壇ベンダーはブースも設置、展示も活況を呈す
隣接の展示会場では、インテルなど協力4社やサードウェーブの事業部門など出展者らがそれぞれブースを構えて、セミナーで解説したソリューションの関連資料や、講演で紹介した製品の実機などを展示。

セミナーの休憩時間や昼休みなどの時間を含め、来場者が熱心に相談や質問をしている姿も多くみられ、改めてAIへの関心の高さがうかがわれました。
セミナー会場に隣接して設けられた展示ブース。セミナーの合間に来場者が押し寄せた
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