デジタル変革(DX)を学ぶ

2023.11.30 18:00

中小企業のためのDX基礎講座◎第1回:DXとは?
新たな価値創出や変革をデジタルで実現することが肝

今や「デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)」といえば企業のデジタル戦略のキーワードでもあり、業務改善や事業変革の切り札といった感じで喧伝されています。それだけに、DXという言葉だけなら大概の人が聞いたことがあるでしょう。

DXの定義はさまざま。DX推進には、そもそも「DXとは何か」をしっかりと理解しておくことが必要となる

 しかし、その導入・成功事例はIT技術や人材、資金力などが潤沢な大企業の取り組みばかり。そうしたリソースを持たない、あるいは極めて限られる中小企業が大企業と同じようにDXの推進に取り組もうとしても無理というもの。その出発点さえ、きちんと理解していない経営者もまだまだ多いのが実情です。

 この「中小企業のためのDX基礎講座」では、中小企業の経営者や管理職クラスの人たちはもちろん、DXに携わるすべての人たちにDXとは何か、その必要性や背景、具体的に何をやっていけばいいのかなどについて分かりやすく解説していきたいと思います。

 それでは、まず本稿では「DXの定義は何なのか」「デジタル化とは別物なのか」など、DXの本質からひも解いていきましょう。

そもそもDXの定義って何?

 時代は猫も杓子もDX。雑誌やWebメディア、展示会、セミナーなど、DXという言葉の集客力の高さは驚くほど。今や企業のデジタル化とDXは同義で語られていますが、改めて「DXって何」と聞かれて答えられますか?

 デジタル変革を意味するDXはビジネスを変革させるものとして企業を主語に語られることが多いですが、もともとはスウェーデンの学者であるエリック・ストルターマン教授が2004年に発表した論文の中で提唱したものです。同教授は、DXを「人々の生活のあらゆる側面にデジタル技術が引き起こしたり影響を与えたりする変化のこと」と定義しました。

 要は、「データやデジタル技術を活用して、新たな価値を生み出していくこと、それにより人々の暮らしが一層よくなること」といったイメージです。

 当然、人々の暮らしをよくするにはさまざまな家電製品やサービス、社会インフラなど、企業や自治体が提供するものが大きく変わっていくことが必要です。そうした背景もあって、DXはビジネスを主語に語られるようになり、さらに企業の生き残り戦略的に語られるようになりました。

 産業界におけるDXという意味では、日本では経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン(*1)」で次のように定義されています。
(*1)後にDXによる企業価値向上のために実践すべき事項などをまとめた「デジタルガバナンス・コード」に統合された。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのもの、組織やプロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

 企業がデジタル変革により新たな価値を顧客に提供することでよりよい暮らしを実現すると共に、そこで働く人たちの従業員満足度を向上させること、競争優位を確立して市場で生き残ることなども含めてDXであると解釈されています。

 こうした産業界のDX推進を目指して経済産業省はさまざまな施策を展開しており、その一つが「デジタルガバナンス・コード(*2)」です。デジタルガバナンス・コードはDXの推進に向けて企業や経営者が実施すべき事項を取りまとめた文書であり、基本的に同コードに沿った施策が講じられています。
(*2)情報処理促進法をベースに2020年11月に策定され、2022年9月に改訂。現在はバージョン2.0が最新版。

経産省HP「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」に掲出されている企業DX推進施策の全体像。リソース制約の多い中小企業はこうした施策の活用が重要なだけに、ぜひ目を通したい

 デジタルガバナンス・コードに関する関連資料や施策などの詳細は、経済産業省のサイト「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」に譲りますので、そちら参照してください。

 いずれにしても、DXとは「データとデジタル技術(IT技術)を活用して企業活動に何らかの変革をもたらし、それによって働く環境も含めて人々の暮らしをよりよくする取り組み」と考えればよいでしょう。

 当然、企業によってそのアプローチはさまざまであり、各社で考え取り組んでいかなければならないところにDXの難しさがあります。

なぜDXという略語なのか?

ところで、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語が、なぜDXとなっているか考えたことはありますか。普通に考えればDTとなりそうなものですが、なぜDXと表記されるのでしょうか。

 トランスフォーメーションという英単語の接頭辞のTransには「~を横断する」という意味があり、同義語として「Cross」があります。英語圏ではTransを「X」と表記する習慣がありますが、これはこの同義語である「Cross」を「X」と略して表記することに由来しています。そういった背景からDXと略され、それが広まってほぼ定着した形になったといわれています。

 ここで大事なポイントは、DX推進では、「X(Transformation)」に重きをおくべきだということです。このことは、デジタル技術を使って変革をもたらすという意味を考えれば明白でしょう。

 まず“変革する”という目的があり、その実現にあたって“いかにデジタルを使うか”がDX推進のカギとなります。変革ありきの視点がなければ、DXに取り組んでも流行に乗るだけで成果が得られずに終わってしまうことにもなりかねないのです。

 
ここがポイント!
●DXの本質は、「デジタル化により人々の暮らしが今以上に良くなる」こと。これを実現していくのは企業であり、それを追求することで企業は市場での競争力が向上し生き残ることができる。
●企業DXの推進では、経産省HPの「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」の一読が効果的。
●「X(変革)」に重きをおくことが、DX推進では重要となる。
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