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2024.05.16 13:00

どうする?運送・建設業界の「2024年問題」
勤務管理のデジタル化だけで、ほかにもメリットが生まれる!

「働き方改革」は、中小企業にも無縁なものではなくなっています。特に運送業と建設業では「2024年問題」の影響は大きく、多くの事業者が労務管理の上で大きな転換を強いられています。罰則も規定されていますから、問題になる前に現状の管理方法を変えていきたいものです。ただ2024年問題は、実は中小企業がDXの一歩を踏み出す大きなチャンスでもあります。

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中小企業にとって勤務管理は手間がかかる業務になっている。しかしこれまでの慣習は通らなくなってしまう

これまで運送や建設業界では、個人の長時間労働については「やればやるだけ稼げる」という、労働者がその働き方を好む側面もありました。

しかし今年4月から中小企業にも適用されている厚生労働省のガイドラインでは、特に時間外労働が大きく規制されます。中小の事業者も今より厳密な労働時間管理を実施せざるを得ません。

「面倒な時代が来てしまったな」。
そう思う経営者の方も多いことでしょう。

しかし、勤務管理というまず目先の課題にデジタルを導入してみたことで、勤務管理の合理化を超えて大量の書類の削減という課題も同時に解決したり、社員の有休消化率も上げられたりした、という、想像していなかったプラスのメリットを得ている企業もあります。

運送・建設業の「2024年問題」とは

まず一度、「2024年問題」についてわかりやすく振り返ってみましょう。

運送業、建設業ではこれまで「残業上限規制」の実施が猶予されてきました。改正労働基準法は2019年に施行されましたが、運送業・建設業に関しては、長時間労働が慣行になっていたため5年間の猶予が設定され、24年まで5年間の猶予が設けられていましたが、気がつけばその24年を迎えています。

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運送・建設業では、個人の長時間労働は長く続いて来た商慣習として、これを急にやめるのは難しい、といった配慮がありましたが、もはやそうはいかなくなりました。

改正労働基準法によって、今後は従業員の労働時間が規制されます(*1)。例えば、

・原則として月45時間、年360時間(限度時間)以内
:臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6か月が限度
などの制限が設けられます。

なお、違反した場合には労働基準法違反として「6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が課されることになります(*2)。

 「働き方」や「残業」については、たとえ社員が納得していても、ふとしたきっかけで、SNSなどで盛り上がる時代です。そうでなくても法律が変わることで「きちんと管理しているかどうか」は重要になります。

(*1)「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
(*2)「労働基準法」e-gov
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

中小企業の勤務管理の実態

一方で、中小企業で今できている動労管理には限界があります。

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「タイムカードを押すだけのために出社」という中小企業は多い。しかし勤務管理のデジタル化はこうした手間を減らすだけでなく、大きな追加のメリットを生む

 まず、人事に関するコンサルティングを実施している「ネオキャリア」の調査によると(従業員500人以下の企業の経営者108人が対象)、勤怠管理方法はタイムカードが多いうえ、勤怠管理を「行っていない」とする企業が4割近くに上っています。

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(出所:「勤怠管理「行っていない」が38.9%という結果!勤怠は「クラウドで管理」はわずか2.8%」PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000184.000011666.html

 もちろん、法規制が始まった今後は、このままでは済みません。

 業務管理システムを運営するSMBが実施した中小企業の社内管理に関する調査では、自分の企業での労働時間管理について約7割の経営者や管理職が「課題を感じている」とすでに回答しています。

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(出所:「従業員の労働時間やタスク管理ができていない経営者・管理者が多数!8割以上が割ける時間は「1時間未満」と回答」PR TIMES)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000113102.html 

 中小企業では勤怠管理、業務量・労働時間の把握といった、2024年問題で問われる項目の管理が十分にできていない現状がうかがえます。

しかし、まずこの勤務管理というひとつのことにデジタルを導入した結果、それ以上のプラス効果を得ている企業事例もあります。

就業・勤怠管理をデジタル化したら、残業時間が3分の1に

 まず青森県八戸市の小幡建設工業です。木造住宅の建設をはじめリフォームなど土木全般を扱う会社ですが、社員のほぼ半数は日々工事現場で勤務するという状況ながらも、勤怠管理は本社でタイムカードを打つというアナログな手法で行っていました。

 本社から現場が遠くても、社員はタイムカードを打つだけのめに移動時間をかけ、本社に寄らなければならなかったのです。

 そこで、現場の従業員がスマートフォンから打刻できるITツール「就業大臣NX スタンドアロン」を導入しました。

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社員がどこからでもスマートフォンで勤務状況を入力できるツールを導入することで、残業時間が3分の1に (出所:「就業・勤怠管理ソフトの導入とオンライン会議の環境整備で働き方改革を推進!!」中小企業基盤整備機構)https://it-case.smrj.go.jp/2020/obatakensetsu

 導入から1年後の成果として、タイムカードのための移動時間など、残業時間を3分の1削減できた、という当初の目的だけでなく、有給申請も同時にデジタル化できたことで有給消化率がアップしたといいます。また、タイムカードを手作業で入力していた管理者の作業も、2日かかっていたものが1日に短縮されました(*3)。


 特に有給申請については、これまで細かな処理が難しいという事情がありました。しかしシステムの導入によって、残業を減らすどころか、1時間単位で有給を申請できるという細やかな社員のケアも可能になったのです。

 最初の目的を超えて、社員にやさしい働き方を提供できるようにもなったという好事例です。

(*3)
「就業・勤怠管理ソフトの導入とオンライン会議の環境整備で働き方改革を推進!!」中小企基盤整備機構
https://it-case.smrj.go.jp/2020/obatakensetsu

送迎バスの複雑な管理をデジタル化、事業刷新への足がかりも

 そして運送業ではこのような事例があります。岐阜県多治見市のコミタクモビリティサービスでは、運行指示、日報、実績入力をデジタル化する「バス運行管理支援システム」を導入しました(*4)。

 それまでは、日々の「運行指示書」や「運行日報」などの書類は、全て管理スタッフやドライバーによる手書きで、バスの帰着後に管理スタッフが2、3時間かけて「運行実績」を手作業で入力するという方法をとっていました。

 これは膨大な業務量で、1日あたり約80便分の運行指示書や約30枚の運行日報、そのほか点呼簿などさまざまな書類の量は、月に3000枚以上にも及んでいました。

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地域の足を支える現場では、運行指示も複雑に。手作業での管理では月3000枚に及ぶ書類のペーパーレスも課題だった (出所:「送迎バスの管理業務DX化で管理スタッフの業務改革を推進し、さらなるステージアップを図る」中小企業基盤整備機構) https://it-case.smrj.go.jp/2021/comitaku

 そこで地元の勉強会で付き合いのあったシステム会社や会計士、社労士とも相談のうえ、運行管理支援システムの導入を本格的に検討し、デジタルシステムの導入に至ったのです。

 大きな懸念もありました。高齢のドライバーに浸透するかどうかという不安です。

 しかし予想以上に運用が進み、専任スタッフが手作業で行っていた運行ルート作成も簡単にできる上、1日約80便分の運行指示書は自動的に各ドライバーのタブレットに表示され、手書きは不要となりました。

 ドライバーの日報入力作業もゼロになり、月次報告も数分の作業になった上、3000枚の書類を削減、という成果もついてきたのです。

(*4)
「送迎バスの管理業務DX化で管理スタッフの業務改革を推進し、さらなるステージアップを図る」中小企業基盤整備機構
https://it-case.smrj.go.jp/2021/comitaku

「何ができるか?」ではなく「何をしたいか」を考えよう

 現在、DXという言葉がバズワードになっています。それが社内にデジタルを導入することだというのは多くの人が分かっていることですが、いざDXを始めようとなっても、「何をやればいいんだろう」という疑問がすぐに出てくることでしょう。

 もちろんDXは一筋縄で行くものではありません。

 では、どうするか。

 ここでご紹介した2つの企業のように、まずは目先の、たとえば「勤務管理」というところに絞ってデジタルを導入してみて、他のことはあとで考える、という取り組みがベストです。

 DXというけれど、デジタルで何ができるのか?と考えるのではなく、今目の前にある経営上の課題をまず一つ見つけ出し、とりあえずそこから始めてみるという姿勢が良いでしょう。

 また、知っているシステム会社がない、という場合は、中小企業庁が開設している「みらデジ」(https://www.miradigi.go.jp/)というサイトがあります。

 ここでは経営課題の診断もそうですが、近くの支援機関やデジタル化支援者をマッチングしてくれるため、まずは相談、という段階でも気軽に使えるようになっています。

 デジタルの導入は、すでに顕在化している、あるいはまだ目には見えていないもののリスクになっている経営課題を掘り出す作業でもあります。

 相談窓口や支援機関などの力をとことん借りて、まず一つの課題を解決してみましょう。そこから世界は急に変わります。

今年も「IT導入補助金」(https://it-shien.smrj.go.jp/)の受付が始まりました。ことしは労務管理だけでなく、インボイス制度に対応したシステムも注目されています。まずはひとつの業務に絞ってデジタルを取り入れてみることが、DXに対する理解の第一歩です。

外部リンク

みらデジ=https://www.miradigi.go.jp/ IT導入補助金2024=https://it-shien.smrj.go.jp/
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