お得にデジタル変革(DX)を実現

2026.07.02 07:00

2026年度中小企業向け“補助金”ガイド
経営課題やDXの目的別に選ぶ主要8制度と採択ポイント

 中小企業がデジタルシフトやDXにより経営変革を推進していくうえで、デジタル人材不足と共に大きな課題が「コスト」です。予算不足がプロジェクトの失敗要因にもなり得るだけに、少しでも潤沢な資金を確保したいというのが、多くの企業にとっての本音でしょう。

 そこで、検討すべきは補助金の活用です。効果的に利用できれば、デジタルシフトやDX推進のコスト負担はかなり軽減されます。

 とはいえ、補助金の種類はさまざまなため、「どれを選べばいいのか分からない」といった企業も少なくありません。そこで、本記事では中小企業向け、あるいは中小企業も使える2026年度の主要補助金を経営課題やDXの目的別に整理して、それぞれの制度の特徴や採択のポイントなどを解説します。ピックアップしたのは、下記の8制度です。

〈守りのDX/生産性向上・効率化〉
・デジタル化・AI導入補助金
・中小企業省力化投資補助金

〈攻めのDX/事業成長・設備投資〉
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)
・中小企業成長加速化補助金
・大規模成長投資補助金(中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金)

〈攻めのDX/マーケティング・営業強化〉
・小規模事業者持続化補助金

〈攻めのDX/研究開発〉
・Go-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)

 なお、「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は2025年度補正予算において中小企業向けの成長投資支援策として再編し、新たに「新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業(仮称)」として統合する構想が示されています。

 ただし、現時点では両補助金とも独立した制度として存在しており、申請窓口や公募要領なども別運用となっているため、本記事では別々の制度として解説しています。  以下、それぞれの補助金事業の概要や制度設計、採択ポイントなどを見ていきましょう。

※本記事は2026年6月末時点の情報をもとに作成。補助事業は要件や要項などが随時変更されるため、公式サイトや事務局ホームページなどで詳細や最新情報の確認が必要です。

守りのDX/生産性向上・効率化

  業務プロセスの効率化や生産性向上など企業や組織の内部にフォーカスしたデジタル変革が「守りのDX」であり、安定性や効率性を重視したDXといえます。具体的には、システム更新や業務のデジタル化、コスト削減などの実現を目指します。

 これらの取り組みを後押しする補助事業は、「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」と「中小企業省力化投資補助金」です。

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)

 中小企業がデジタルシフトを推進するうえで身近な補助金といえば、デジタル化・AI導入補助金でしょう。デジタルシフトによる中小企業や小規模事業者などの労働生産性アップや業務効率化を実現するため、デジタルツールの導入を支援するものです。

 デジタル化・AI導入補助金は、前年までの「IT導入補助金」を継承した事業であり、2026年に名称変更されました。背景には、旧IT導入補助金ではITツールの導入でプロジェクトが終わってしまうケースが見られたことから、補助事業による成果の定着、AI活用の重要性などを意識させる狙いがあります。

 とはいえ、基本的な制度設計は変わっていません。IT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請するスキーム、「通常枠」や「セキュリティ対策推進枠」といった複数の申請枠、補助率や補助上限、対象経費などは前年と同じです。

「デジタル化・AI導入補助金2026」における申請枠の種類と概要(出典:中小企業庁『中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026」の概要』より抜粋)

 この補助金は、中小企業がDXに取り組む際の「最初の一歩」を支援する制度といえます。紙や手作業に依存した業務やプロセスをデジタル化し、生産性向上につなげることを目的としており、申請のハードルも比較的低くDXの基盤づくりに最も活用しやすい補助金といえるでしょう。

 ただし、前年から審査基準が厳格化されていることは留意点です。2024年までは7割程度だった採択率が、昨年は5割以下へと大幅に低下しており、「通常枠」は4割を切りました。この傾向は2026年度も続くと予想され、名称変更などの背景要因を理解し、成果定着を見据えたデジタル化のプロジェクトであることが採択のポイントといえます。

・本補助金の詳細は下記から
中小企業デジタル化・AI導入支援事業

中小企業省力化投資補助金

 人手不足に悩む中小企業の課題をDXにより解決し、売上拡大や生産性の向上を後押しする補助事業が、中小企業省力化投資補助金です。

 申請枠は、「カタログ注文型」と「一般型」。いずれもロボットやIoT、自動精算機などの導入により、人手に依存していた業務を自動化・省人化して生産性を高めることを目的としており、人材不足への対応と競争力強化を同時に実現できる点が、この補助金の大きな特徴となっています。

 カタログ注文型は、申請が容易で即効性のある省力化投資です。補助対象はカタログ掲載の汎用製品。補助率は2分の1以下で、補助上限額は従業員数で異なり、従業員数21名以上の場合で最大1,500万円が補助されます。

「省力化補助金(カタログ注文型)」の補助上限額。賃上げ要件を満たした場合は()内の金額に引き上げ。2回目以降の申請では累計補助上限額の規定あり(出典:「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」の公式ホームページから抜粋)

 省力化投資補助金のカタログ注文型は、従来にない利用のしやすさが大きな特徴です。あらかじめ省力化の効果が証明された汎用製品から、自社の課題に合ったデジタルツールを選択できるため、当該製品の使用が想定される業種の事業者が導入することで、投資に見合った効果が得られます。

 カタログ登録された製品は清掃や配膳ロボット、自動倉庫、自動精算機など幅広く、さまざまな業種や業務において省力化投資のための補助金として活用を検討できます。

 なお、カタログ注文型は2026年3月19日に制度改定されました。従業員数5名以下と従業員数6~20名の企業で補助上限額が引き上げられたほか、補助上限額引き上げの要件となる賃上げの定義が見直されています。また、申請受付期間が2027年3月末頃まで延長されました。

 2回目以降の交付申請に関して、累計補助上限額の見直しと申請に伴う要件の追加といった制度変更も行われています。

・本補助金の詳細は下記から
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)

 一方、一般型はオーダーメイド性が特徴です。個々の現場や業務内容などの実態に合わせた設備導入やシステム構築が可能なため、個別最適ではなく全体最適を目指すDXに適しています。

 補助金額は従業員数で異なり、大幅な賃上げ要件などを満たすことで最大1億円(従業員数101人以上の場合)。補助率は、中小企業が基本2分の1(大幅な賃上げ要件を満たすと3分の2)、小規模企業などは3分の2です。

「省力化投資補助金(一般型)」の補助上限額。賃上げ要件を満たした場合は補助上限額と補助率は()内の条件に引き上げ(出典:「中小企業省力化投資補助金(一般型)」の公式ホームページから抜粋)

・本補助金の詳細は下記から
中小企業省力化投資補助金(一般型)

攻めのDX/事業成長・設備投資

 業務改善などの組織内部に焦点を当てた守りのDXに対して、市場での競争力向上や企業の成長といった外部に目を向けた変革が「攻めのDX」です。

 具体的には、新技術を利用した従来にないビジネスモデルの開発や市場での差別化、商品やサービスの高度化などにより、市場競争力を高めることで組織としての成長を目指します。ビジネスを大きく変革するという意味で、目指すべき本来のDXといえます。

 攻めのDXの中でも、特に設備投資の促進などにより事業の成長・拡大を支援する補助金事業が「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」「中小企業成長加速化補助金」「大規模成長投資補助金」です。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

 正式名称であるものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、「ものづくり補助金」や「もの補助」などと呼ばれます。その略称ゆえ、対象業種は製造業だけと思われがちですが、商業やサービス業も含めて広く活用できる施策です。

 補助内容には、2種類の枠があります。革新的な新製品や新サービスの開発を支援する「製品・サービス高付加価値枠」と、海外市場での需要開拓をサポートする「グローバル枠」です。

 製品・サービス高付加価値枠は、自社の技術力を用いて新たな価値を提供する新商品や新サービスの開発を支援するもの。単なる機械装置の導入や業務プロセスの改善による効率化、新規性が他と同程度の場合などは対象となりません。

 補助上限額は従業員規模で異なり(補助下限額は100万円)、補助率は中小企業が2分1、小規模事業者が3分の2です。例えば、従業員51人以上なら、補助対象経費5,000万円の事業において最大2,500万円の補助が受けられます。

ものづくり補助金の「製品・サービス高付加価値枠」の補助金額・補助率(出典:公式ホームページ掲載『はじめてのもの補助』資料より抜粋)

 グローバル枠は、海外事業を通じて国内の生産性を高める取り組みに必要な設備やシステムへの投資を支援する申請枠です。

 具体的には、海外への直接投資や市場開拓(輸出)、インバウンド対応、海外企業との共同事業といったものが挙げられています。補助上限額は、従業員規模に関わらず、最大3,000万円(補助下限額100万円)。補助率は、中小企業が2分の1、小規模事業者などが3分の2です。

ものづくり補助金の「グローバル枠」(出典:公式ホームページ掲載『はじめてのもの補助』資料より抜粋)

 本補助金の製品・サービス高付加価値枠とグローバル枠ともに、一定の追加要件を満たした場合の特例措置が設けられています。

 大幅な賃上げ要件を満たすことで、従業員数の規模に応じて補助上限額の引き上げが適用されます。例えば、51人以上では補助上限額に最大1,000万円を上乗せ可能です。また、所定の賃金水準の事業者が最低賃金の引き上げに取り組む場合、補助率は3分の2となります。

 ものづくり補助金では、単なる設備更新では採択されにくく、デジタル技術を活用した新たな付加価値の創出が必要です。この点で、本補助金の活用への取り組みはDXとの大きな接点につながります。

 2026年度の公募スケジュールは公表されていませんが、夏頃に24次募集スタートが予想されています。最新情報を確認しながら準備を進めましょう。

・本補助金の詳細は下記から
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)

 新事業進出補助金は、「中小企業・小規模事業者の成長につながる新事業進出・事業転換を重点的に支援するための新たな支援措置」として、2025年に制度化されました。

 この補助金では、例えばIoTやAIを活用した新サービスの立ち上げ、既存の製品やサービスのデジタル化によるビジネスモデルの転換といったプロジェクトに利用が可能です。DXではビジネス変革により新たな収益源を生み出すことも重要であり、そうした取り組みを後押しする制度といえます。

 まず、本補助金の対象は企業の成長・拡大に向けた新規事業に挑戦する中小企業などです。補助上限額は従業員数で異なり、101人以上の場合で上限7,000万円、大幅賃上げ特例の適用により最大9,000万円となっています。同20人以下の企業でも、最大3,000万円(大幅賃上げ特例適用)が補助されます。

 補助率は2分の1ですが、地域別最低賃金引き上げの特例を適用することにより、3分の2への引き上げが可能です。対象経費が新事業に必要な機械装置やシステム構築費(リース料を含む)、建物費(構築物費を含む)、広告宣伝・販売販促費、外注費など幅広いことも特徴です。

 留意点は、補助下限額が750万円であること。予算規模1,000万円超のプロジェクトとなるため、規模の小さな企業には入念な経営計画が求められます。

新事業進出補助金の補助金額と補助率(出典:『新事業進出補助金 概要説明会 第4回』資料より抜粋)

 補助事業の目的が「既存市場の枠を超えた新製品開発や新市場への進出といった新たなチャレンジ」であるだけに、補助対象事業の要件も多岐にわたっています。

新事業進出補助金における要件(出典:『新事業進出補助金 概要説明会 第4回』資料より抜粋)

 申請にあたっては、上図の要件(基本は①~⑤)を満たす3年から5年の事業計画に取り組むことが求められます。中心的な要件は①新事業進出要件であり、「製品等の新規要件」「市場の新規要件」「新事業売上高要件」という詳細項目が提示されています。

 製品と市場の新規性については「補助事業者にとって新製品(新サービス)・新規顧客であること」、売上高要件は「新たな製品やサービスの売上高が総売上高の10%以上、または付加価値額の15%以上」などとされています。

 付加価値額要件や賃上げ要件、事業場内最低賃金水準要件などでも具体的な数値が定められています。公募申請・採択のハードルは高めで、採択率は4割弱。数値目標の達成を見据えた現実性の高い事業計画の策定が必要です。

・本補助金の詳細は下記から
新事業進出補助金(中小企業新事業進出促進事業)

中小企業成長加速化補助金

 中小企業の中でも、飛躍的な成長を目指す企業の設備投資を支援する補助事業が中小企業成長加速化補助金です。企業全体を変革する大型プロジェクトが想定され、部門単位のデジタル化ではなく、経営戦略と一体となった全社規模のDX推進に適した制度です。

 補助対象者は、売上高100億円を目指す中小企業で、要件として「100億宣言(*1)」を行っていることが求められます。補助上限額は最大5億円で補助率2分の1となっており、補助事業投資額にして10億円の大型プロジェクトに活用が可能です。100億円というとハードルの高さを感じますが、売上高10億円から100億円未満の中小企業であれば宣言できるので、間口は広いといえます。
(*1)公式ポータルサイトから申請が必要

 ただし、大型補助金だけに最低投資額の要件も大きく、1億円以上の投資事業であることが求められます。加えて、政府方針である賃上げ要件も規定されており、補助事業終了後3年間にわたり1人当たり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上が必要です。

中小企業成長加速化補助金の事業概要。※一定の賃上げ要件については、1人当たり給与支給総額4.5%以上(出典:中小企業成長加速化補助金事務局の『概要資料』より抜粋)

 中小企業加速化補助金は、制度化された時点で「令和8年度末までに3回の公募を実施し全体で600者程度の事業者に補助金を交付。事務費は原則70億円を上限とする」(中小企業基盤整備機構)とされ、現在は2回目の審査中です。

 本稿執筆時点で審査が進んでいる2次公募の終了(2026年7月下旬以降に採択結果公表)を目途に3次公募の実施が予想されており、当初どおりであれば3次公募が最終となります。

・本補助金の詳細は下記から
中小企業成長加速化補助金

大規模成長投資補助金(中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金)

 前述の成長加速化補助金と同系列の施策であり、補助上限額の最も大きい事業が大規模成長投資補助金(または、中堅等大規模投資補助金)です。

 本補助金は、正式名称を「中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」といい、中堅企業、中小企業やスタートアップ企業(設立20年以内、公募開始時にベンチャーキャピタルなどが株主構成に加わっていること)など、補助対象は幅広くなっています。

 事業目的は、持続的な地域雇用と賃上げであり、その実現に向けて人手不足などの課題に対応し、成長していくことを目指して取り組む大規模投資を促すこと。このため、補助上限額は50億円(補助率3分の1)と、文字通り大規模な投資の支援が特徴です。

 生産効率を向上させるための自動化設備を導入した工場新設、AIやIoTを活用したスマートファクトリーやスマート物流センターの新設、省力化を目的とした既存拠点への大規模な最新鋭設備の導入といった大規模プロジェクトが対象となります。デジタル技術を活用して企業全体の競争力を高めることが目的であり、最大規模のDX関連補助金といえます。

 申請枠には、「一般企業枠」と「100億宣言企業枠」があります。100億宣言を申請した中小企業向けの100億宣言企業枠は、投資下限額や賃上げ率などの要件が一般企業枠より軽減されるなど、申請しやすくなっています。100億宣言企業枠として予算が確保されており、本補助金の活用を検討する中小企業にとって採択率の向上が期待できそうです。

「大規模成長投資補助金」の概要(出典:「中堅等大規模成長投資補助金」事務局サイトの5次公募時点の情報をもとに編集部で作成)

 2026年5月に第5次公募の採択結果(申請198件/採択77件/倍率約2.6倍)が公表されており、第6次公募が同年夏頃に開始される予定です。

 補助事業としてはかなりの大規模となるだけに、事業計画の策定や体制の整備など時間をかけて進めることが必要です。活用を考えるなら、早期に着手したいところ。公募ごとに要件などが変更となっている項目もあり、第6次公募要領が公開されたら、いち早く読み込むことが必要でしょう。

・本補助金の詳細は下記から
大規模成長投資補助金(中堅・中小・スタートアップ企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金)

攻めのDX(マーケティング・営業強化)

 企業の成長にとっては、マーケティングや営業強化などによる販路拡大や売上アップなども大きな経営課題です。これを解決するには、外部に焦点を当てた攻めのDXへの取り組みが求められます。

 特に、規模の小さな企業が成長していくうえでは、この領域の強化は欠かせません。これを支援する施策としては「小規模事業者持続化補助金」があります。

小規模事業者持続化補助金

 生産性向上と持続的な発展を目的として販路開拓に取り組む小規模事業者などを、金銭面から支援する施策が小規模事業者持続化補助金です。

 単なる設備導入ではなく、「売上や顧客の拡大につながる取り組み」を後押しする制度として位置付けられています。具体例は、新商品を製造するための機械購入、宣伝のためのチラシの作成・配布、展示会や見本市への出展など。さらに販路開拓と共に実施する業務効率化や生産性向上への取り組みも補助対象事業とされています。

 本補助金制度には、「一般型 通常枠」や「創業型」、「共同・協業型」などの申請枠が用意されています。ここでは、一般型 通常枠について概要を紹介します。

 小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉の補助対象者は文字どおり、小規模事業者であること。その定義は業種により異なり、例えば、宿泊業・娯楽業や製造業などでは常時使用する従業員が20人以下です。なお、個人事業主や一定の要件を満たす特定非営利活動法人も含まれます。

 補助上限額は原則50万円ですが、インボイス特例や賃金引上げ特例の適用により最大250万円まで支援されます。補助率は3分の2が原則ですが、賃金引上げ特例を適用した赤字事業者は4分の3となります。補助事業経費約267万円で上限となる200万円の補助を受けることが可能です。

 対象経費は比較的幅広いですが、留意点もあります。例えば、広報費やWebサイト関連費は単独では応募できず他の経費項目と組み合わせた申請が求められます。また、新商品開発費はテストマーケティングや市場調査が必要です。

「小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉」の概要(出典:第20回公募要領をもとに編集部にて作成)
 
「小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉」の補助上限金額(出典:第20回公募要領をもとに編集部にて作成)

 その規模感から、小規模事業者のデジタルシフトやDXへの端緒として活用しやすい補助金の一つですが、採択率を上げるには経営課題と補助事業のつながりを明確に示すことが必要です。

 例えば、「売上が伸びないからホームページを作る」といった理由では説得力を欠きます。「持続的成長には新たな顧客層の獲得が課題であり、新たにECサイトやSNS広告を活用して販路を拡大する」といった具合に、課題や原因、解決策、期待効果などを一貫したストーリーとして描くことが重要でしょう。

 本稿執筆時点における公募スケジュールでは、2026年11月5日より「一般型 通常枠(第20回公募)」と「創業型(第4回公募)」の申請受付が開始されます(申請受付は同年12月15日まで)。

・本補助金の詳細は下記から
小規模事業者持続化補助金

攻めのDX(研究開発)

 デジタルシフトやDX推進では技術開発も重要な取り組みです。新たに開発された製品やサービスの事業化により、企業成長は実現されるもの。しかし、リソースが制限される中小企業にとって研究開発のハードルは、なかなか高いのが現状です。

 研究開発というビジネス領域を支援する制度には、「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」があります。

成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

 Go-Tech事業は、中小企業などが大学・公設試などの研究機関と連携して、事業化につながる可能性の高い研究開発や試作品開発、販路開拓への取り組みを最大3年間にわたり支援する施策です。「旧サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」と「旧サビサポ事業(商業・サービス競争力強化連携支援事業)」が統合され、2022年度からGo-Tech事業として運用されています。

 デジタルシフトやDX推進で重要となる新技術や高度なサービスの創出を支援する点に特徴があり、将来の事業化を見据えたイノベーション創出が目的です。研究開発から事業化までを一体的に支援することから、技術を競争力へと結び付ける「研究開発型DX」の代表的な補助金といえるでしょう。

 中小企業庁による「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」を踏まえた事業が対象。特定ものづくり基盤技術(情報処理や精密加工、立体造形など12技術分野)や、IoTやAIといった先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発などの取り組みを支援することで、中小の製造業やサービス業の国際競争力の強化を目的としています。

 申請枠には、「通常枠」と「大型研究開発支援枠」があります。大型研究開発支援枠では3年間で最大3億円の研究開発経費が補助され、「研究実施機関で直近3か年連続して研究開発を行っており、年間1億円以上を投じた年度があること」が要件。不採択となった場合、通常枠での再審査へ切り替えることが可能です。

「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」の概要(出典:『令和8年度 成長型中小企業等研究開発支援事業 公募要領』をもとに編集部で作成)

 この補助事業の特徴は、研究開発そのものの支援ではなく、「事業化まで見据え、技術に加えて市場性も重視した制度設計」であること。それゆえ採択されるためには、「技術の独創性」と「事業化の実現性」の両立がポイントです。技術的な新規性や技術課題の明確化、市場性や事業化の可能性、社会へのインパクトなどを考慮し、ビジネス戦略の視点に立った研究開発プロジェクトであることが重要となります。

・本補助金の詳細は下記から
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

 以上、中小企業向けの主要補助金制度の概要を見てきました。補助金の活用では申請ハードルのレベルや補助金額などで選びがちですが、デジタルシフトやDX推進の観点から、その取り組みを成功させるには自社の経営戦略や事業戦略と補助金の目的が一致している必要があります。

 業務改善なら「デジタル化・AI導入補助金」や「省力化補助金」、新製品や新サービスの開発は「ものづくり補助金」、新市場に乗り出したいなら「新事業進出補助金」、研究開発は「Go-Tech事業」といった具合です。まず、経営課題を整理したうえで、それに適した制度を選ぶことが採択とDX推進への近道といえるでしょう。
 

ここがポイント!
●デジタルシフトやDXの推進における投資コストの課題は国の補助事業の活用を検討したい。
●補助金の活用では、制度ごとの目的や制度設計を理解し、デジタル化を組み込んだ自社の経営戦略に適した補助制度を選ぶことが重要である。
●生産性向上や業務効率化など内部変革の実現には、守りのDX向けの補助金制度が向いている。
●攻めのDX向け補助金には、設備投資による事業拡大や営業強化、研究開発などを目的とした施策がある。

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