お得にデジタル変革(DX)を実現

2026.03.02 11:30

優遇税制でデジタルシフトやDX推進のコスト課題を解決
2026年度「税制」で使える中小企業関連投資減税策を紹介

 中小企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルシフトを進めるうえではいくつか課題があります。必要なIT関連設備を導入するためにかかるコストも、その一つでしょう。

 この課題を解決するために補助金は有効な手段ですが、税制面からも中小企業の設備投資を後押しするための優遇税制が用意されています。これらの優遇税制の活用により、税金が数万円から数百万円、規模によっては数千万円単位で軽減される可能性もあり、DX推進では減税策に目を向けてみるのも一考です。

 毎年、税制は改正されており、個人所得課税から法人税、消費税まで幅広く見直されます。例えば、多くの優遇税制は適用できる期限が定められた時限措置のため、その期限延長や制度設計の見直し、あるいは新たな制度の創設といったことが前年度に検討され、次年度に向けた税制内容として年末に「与党税制改正大綱」としてまとめられるわけです。

 2026年度税制についても、2025年12月19日に「自民党・日本維新の会2026年度税制改正大綱」が決定されました。そこで、本稿では中小企業がDXやデジタルシフトに関連した設備投資などで活用を検討できそうな、2026年度の優遇税制を取り上げ、その概要を解説していきます。

 具体的には、「特定生産性向上等設備投資促進税制(大胆な投資促進税制)」「少額減価償却資産の特例」「中小企業経営強化税制」「中小企業投資促進税制」という4つの施策です。前者2つの制度は2026年度に改正される見通しで、後者の2施策は前年度の改正を経て2026年度も引き続き活用できる減税制度となっています。
 

税制における中小企業の範囲

 税務における中小企業の定義は中小企業基本法のそれとは異なります。制度により、「中小法人」や「中小企業者」、「中小企業者等」と呼称されており、資本金1億円が一つの判断基準となっています。それぞれの大まかな定義は以下の通りです。

中小法人:普通法人のうち資本金または出資金の額が1億円以下の法人、もしくは資本金または出資を有しない法人。
中小企業:資本金または出資金の額が1億円以下の法人/資本金または出資金を有しない常時使用の従業員が1000人以下の法人。
中小企業者等:「中小企業者」に該当する法人/常時使用の従業員数が1000人以下の個人事業主/協同組合等

 ただし、各定義において資本金1億円以下であっても該当しない法人等が規定されていること、制度によって要件が異なる場合があることなどは留意点です。適用できるかどうか、まずは事業者の適用範囲をしっかりと確認することが必要といえるでしょう。

 なお、本稿は税制改正大綱ベースの解説です。税制改正大綱の内容は国会審議・可決を経て決まります。このため、制度内容は変更される可能性もあり、必ず最終的な措置内容や制度設計の確認が欠かせません。また、実際の検討や適用にあたっては、専門家への相談が必要です。

特定生産性向上等設備投資促進税制

 2026年度改正で新たに創設される制度として大綱に盛り込まれた施策が「特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な投資促進税制)」。世界的に投資の囲い込み競争が激しくなる中、国内企業の大型投資を後押しするべく制度化される見通しです。

 同制度は、「特定生産性向上設備等(仮称)を取得して事業の用に供した場合に、取得価額の特別償却(全額を損金算入)か税額控除を選択適用できる」というものです。税額控除は7%(建物や建物附属設備などは4%)で、控除上限は法人税額の20%。上限超過額について、一定の要件を満たす場合は3年間の繰越控除が認められます。

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新たに創設される見通しの「特定生産性向上等設備投資促進税制(大胆な投資促進税制)」の創設案(出典:経済産業省の「令和8年度 経済産業関係税制改正について」より抜粋)
 
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「特定生産性向上等設備投資促進税制(大胆な投資促進税制)」の制度概要(出典:資料等をもとに編集部で作成)

 適用対象となる事業者は原則、青色申告を提出する全法人で、基本的に業種規定もありません。対象設備は機械装置/工具および器具備品/建物/建物附属設備/構築物/ソフトウェアで、いずれも一定の価額要件が設定されています。

 これらが特定生産性向上設備等として認められるための要件も規定されています。例えば、投資規模です。創設の目的として「国内投資の拡大を通じて日本企業の稼ぐ力を向上させ、賃上げを含めた好循環を形成するため、付加価値の高い大胆な国内投資を促進する」とされており、投資に求められる金額規模も大きく、中小企業でも5億円以上が要件です(大企業については35億円以上の投資が要件)。

 この他、特定生産性向上設備等の適合基準の定義として、「投資計画による投資利益率が年平均15%以上」や「生産性向上設備等の導入が設備投資を増加させること」といった要件が求められており、これら基準に適合していることについて経済産業大臣の確認が必要となっています。

 投資の規模感や投資利益率の要件など、一般的な中小企業にとってはややハードルが高いといえます。それゆえ、この投資促進税制は製造業や建設業など大規模な設備投資を検討している企業や、売上規模の拡大へ積極的に取り組む企業向けの制度と見るのが現実的でしょう。

 措置期間は、2029年3月末までに設備投資計画について法律にもとづく確認を受けた事業者が、確認を受けた日から5年以内に設備を取得して事業に用いること。投資計画に取り組んでいる期間中は、「中小企業経営強化税制(繰越税額控除の適用は可)」「地域未来投資促進税制」「カーボンニュートラル投資促進税制」との重複適用はできません。

 中小企業経営強化税制などは適用が検討されることも少なくないため、中期的な投資計画も視野に入れながら、特定生産性向上設備等投資促進税制の活用を考えるべきでしょう。

少額減価償却資産の特例

 ある意味、中小企業向け減税策で最も認知度の高い施策が、「少額減価償却資産の特例」ではないでしょうか。実際、この特例は約66万社もの中小企業が適用しているとのことです。

 この特例は、中小企業や小規模事業者の事務負担の軽減やデジタル化による業務効率化などを目的とした制度であり、その創設以降、何度も延長が講じられてきました。2026年3月末で適用期限を迎えることになっていましたが、2026年度改正において拡充・延長される見通しです。

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単価基準額が引き上げられる予定の「少額減価償却資産の特例」の改正概要(出典:経済産業省の「令和8年度 経済産業関係税制改正について」より抜粋)
 
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「少額減価償却資産の特例」の制度概要(資料等をもとに編集部で作成)

 ビジネスに用いる資産を購入した場合の税務上の本則では、10万円未満は消耗品費として全額を損金算入(税務上で経費として処理すること)、20万円未満は3年間の均等償却、20万円以上は機器等ごとに定められた期間で償却することが規定されています。

 この本則に適用されるのが少額減価償却資産の特例であり、これまで中小企業は「単価基準額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを損金として即時償却」することが可能でした。

 2026年度税制改正では、この特例における取得価額の単価基準額が40万円未満へと引き上げられたうえで、2028年度末まで3年間の延長措置が講じられる見通しです。即時償却できる合計金額は300万円と変更ありません。

 対象は青色申告書を提出する中小企業者、中小事業者、農業協同組合などです。ただし、通算法人や常時使用の従業員数400人(出資金等が1億円を超える組合等は300人)超の法人や個人は対象外です。従業員数の規定については従来500人とされてきましたが、2026年度税制で400人へと縮小される予定となっています。

 この特例はパソコンや周辺機器、プリンター、プロジェクターといったIT機器をはじめ、幅広いビジネス機器や備品などの取得に活用でき、新品だけでなく中古資産も対象とされます。なお、「取得資産は損金処理を行う年度内に事業用として使い始めること」が適用の要件です。

 実務上のポイントとして、少額減価償却資産の特例により全額を損金算入した資産であっても、当該事業年度の償却資産税の対象となる点には留意しておくべきでしょう。

 また、「40万円未満」と「合計300万円」を判断する基準についても、理解しておきたいところ。まず40万円未満の判断は消費税の扱いをどうするかで異なり、会計方法が税込経理方式ならば税込価格、税抜経理方式の場合は税抜価格が基準となります。免税事業者については、税込価格で判断します。

 年間の上限金額300万円も、誤解されることが多々あります。これは単体資産の累積台数で判断することとなります。例えば、35万円のパソコンを9台購入した場合、合計金額は315万円です。このうち300万円を上限に損金処理できるわけではなく、300万円以内に収まる8台分の280万円までが経費として損金処理できるわけです。

 このため、少額減価償却資産の特例による節税効果を最大化するには、期末に上限金額に最も近くなるような資産の組み合わせを検討することがコツといえます。手続きには、法人は確定申告書への別表と適用額明細書、個人事業主は青色申告書の原価償却費の計算の適用欄に「措法28の2」と記載することが必要です。

中小企業経営強化税制

 中小企業による稼ぐ力の向上への取り組みを支援する中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けて導入する設備について特別償却(全額即時償却)か税額控除(7%または10%)の優遇措置を選択適用できる制度。特別償却と税額控除とも、限度額を超える金額を翌事業年度に繰越可能です。

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「中小企業経営強化税制」の概要(出典:資料等をもとに編集部で作成)

 この税制では、経営力向上計画として4つの枠組みが設けられています。具体的には、上記の表に記載したように「生産性向上設備(A類型)」「収益力強化設備(B類型)」「経営資源集約化設備(D類型)」「経営規模拡大設備(E類型)」です。  それぞれの類型の目的は次の通り。A類型は新しい設備導入による生産性の向上、B類型は投資利益率視点での収益力の強化、D類型はROA(総資産利益率)視点での収益力向上、E類型は成長投資向けとなっています。

 対象資産は機械装置や工具、器具備品、ソフトウェアなどで、経営力向上計画の認定取得に求められる要件はそれぞれ異なります(表参照)。

 2025年度の税制改正で拡充されたE類型では売上高100億円超を目指すロードマップ作成などを要件に、建物や附属設備も対象資産とされ、特別償却(取得価額の最大25%)または税額控除(取得価額の最大2%)の選択適用が可能となります。

 E類型は、売上高100億円企業を目指す中小企業に対する措置で、中堅企業への成長ポテンシャルが高い中小企業を後押しするもの。売上高100億円超と聞くとハードルがかなり高いと感じられますが、「前年度売上高が10億円超90億円未満」と要件定義されているように、チャレンジできる間口は幅広いといえるでしょう。

 なお、E類型ではロードマップに沿った投資計画期間中は、中小企業投資促進税制と少額減価償却資産の特例の適用を受けられません。

中小企業投資促進税制

 中小企業投資促進税制は文字通り、中小企業に対して設備投資を促すことを目的とした減税策で、一定の設備投資に対して特別償却30%または税額控除7%を選択適用(税額控除は資本金3000万円以下が要件)できる制度です。

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「中小企業投資促進税制」の概要(出典:資料等をもとに編集部で作成)

 対象資産は、機械装置や測定工具・検査工具、ソフトウェア、普通貨物自動車や船舶です。器具備品等は対象外なので、パソコンやコピー機、オフィス家具などには適用できません。

 対象事業者は青色申告書を提出する中小企業者等または中小企業。業種は農林水産業や建設・製造業から小売、飲食サービスまで幅広く指定されていますが、対象となっている資産を見ると、どちらかといえば製造業など寄りの制度といえるでしょう。

 細かな定義はありますが、基本的には「対象資産の価額要件」と「適用期間内に対象設備を取得して事業に用いること」のみが規定となっており、確認などを不要とする点で適用しやすい減税策です。

適用税制の選択ポイント

 以上、2026年度に中小企業が適用できる投資関連の減税策を紹介してきました。選択の目安としては、300万円程度までのデジタル投資なら「少額減価償却資産の特例」が適しています。デジタルシフトやDX推進のプロセスであるデジタイゼーションやデジタライゼーション、DXの実証実験などで活用しやすいといえます。

 投資計画の策定や確認などの要件が要らず一定規模の投資に活用したいのであれば「中小企業投資促進税制」が選択肢となります。

 また、設備投資を軸とした生産性向上や企業成長を目的とした場合は「中小企業経営強化税制」、数億円規模の大型投資なら「特定生産性向上設備等投資促進税制」でしょう。

 中小企業経営強化税制と特定生産性向上設備等投資促進税制は綿密な投資計画を策定し確認を受けることが必要なだけに、ハードルは低いものではありません。とはいえ、DX推進の本質はビジネス変革により、生産性向上や付加価値の創出です。

 この意味で、デジタルを駆使した生産性向上や付加価値創出など視野に入れた投資計画により、これらの税制活用に取り組むことはDX推進へのチャレンジになるのではないでしょうか。
 

ここがポイント!
●優遇税制を活用してデジタルシフトやDX推進を検討することも可能。
●2026年度税制改正で創設される「特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な投資促進税制)」は大規模投資を後押し
●「少額減価償却資産の特例」は、部分的業務のデジタルシフトやDX推進の実証実験で活用。
●投資計画の策定・取得が必要な「中小企業経営強化税制」と、比較的に適用しやすい「中小企業投資促進税制」。

外部リンク

経済産業省 令和8年度税制改正について
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